TKWO――音楽とともにある人生♪ テナー・サクソフォン・松井宏幸さん Vol.2

演奏家の大変さと喜び

――佼成ウインドの印象はどうでしたか?

今年8月に杉並公会堂で行われたファミリーコンサート

入団したのは2017年ですが、私自身は、大学4年生の頃からエキストラとして演奏に呼んで頂いていたので、楽団との付き合いでいえば、20年ぐらいになります。団員からは、「また(松井が)来た」と言われるぐらい顔なじみが多い楽団でした。ただ、カルテットの活動が活発になって、入団前の10年間ほどはあまり来ていなかったので、入団した当初は、知っている先輩方が定年で退職してしまい、若いプレイヤーが増えていました。中高生時代に聴き知っていた佼成ウインドとは少しずつ変わっているのだと実感しました。楽団はアンサンブル(合奏)なので、人が変われば、演奏も変化していくといわれます。団員の世代交代が進むのは仕方のないことかもしれませんが、受け継いできたものを大事にしていくことも、その楽団の個性として大切かと思います。

今日も練習中に譜面に目をやると、フェネルさん(TKWO桂冠指揮者のフレデリック・フェネル氏)が書き込んだメモ書きがあり、そんなことを考えました。かつて演奏した楽譜を長年受け継いでいくように、団員一人ひとりが、先輩たちの音楽づくりに思いを馳(は)せながら、受け継ぐべきものを大事にする。それを踏まえた上で、より良いものを目指すために新たに挑戦していく。理想かもしれませんが、そうした伝統と挑戦を併せ持つ佼成ウインドであり続けたいと願っています。

――笑顔が多い松井さんですが、演奏家として、「つらい」「苦しい」と思った経験はありますか?

ないですね。大変だなと思うことはありますよ。例えば朝起きて、楽器を持って練習を始める時に、ふと、今日も明日もあさっても、こうやって常に練習し続けなければならないことに対しては、大変だなあと考えますから。楽器をまったく吹かない日ができてしまった時には、罪悪感のような気持ちが湧いてきて、この感覚と一生付き合っていかなければならないことを思うと、これもまた、大変だなあと感じます。でもこれは、つらいとか、苦しいというのではありません。「大変だな」という感覚は、好きなことをずっと続けられること、仕事として生きる糧にできたことへの喜びとセットのものであるからです。練習を続ける毎日は、人によっては苦痛な毎日に見えるかもしれません。でも、これなしに、大好きな音楽は続けられません。この大変さと喜びは、コインの表と裏のように切り離せないものだと思っています。

プロフィル

まつい・ひろゆき 1978年、埼玉・蓮田市出身。私立埼玉栄高校を卒業後、東京藝術大学で須川展也氏に師事する。東京文化会館主催の「新進演奏家デビューコンサート」オーディションに合格したほか、第8回日本クラシック音楽コンクール全国大会で第3位、第22回管打楽器コンクールで入賞。現在、「カルテット・スピリタス」「MUSIC PLAYERS おかわり団」「須川展也サックスバンド」メンバーほか、洗足学園音楽大学講師、ビュッフェグループジャパン専属講師を務める。