TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・奥山泰三さん Vol.2

巨匠の偉大さは消えることなく

――日々、あらゆることから学ぶ姿勢が大切なのですね

そうですね。吹奏楽の世界では、毎年、新しい楽曲が作曲され、演奏技術も進化するので、日頃から吹奏楽をきちんと勉強する時間もつくらなければならないと思っています。吹奏楽を仕事とする以上、これは欠かせません。

以前、「全米大学バンド指導者協会」(CBDNA)主催による、アメリカの吹奏楽の指導者たちが一堂に会する勉強会に何度か参加させてもらったことがあります。そこでフェネルさんによくお会いしました。

この勉強会では、よくフェネルさんと一緒に分科会に参加しましたが、まるで学校の授業のようで、朝の9時から夜10時まで吹奏楽についてみっちりと学びました。具体的には4日間の行程で、一日のうち、午前中の3コマが座学の研修会で、午後は平均三つの演奏会を聴講します。これを4日繰り返すのです。その時々の吹奏楽の世界的な潮流を肌で感じ、新しい楽曲にも触れられるので本当に勉強になります。ただ、全て英語でのやりとりなので本当にしんどかったです。

ある日、午前中の1コマを休み、気分転換も兼ねて数人で買い物に行ったのですが、帰ってきた私たちを、フェネルさんは見つけるなり、鋭い眼光で「Music is no holiday!」(音楽には休みは無いよ!)と叱られました。30歳の誕生日にアドバイスしてくださった時の優しい表情とは全く違っていました。フェネルさんは当時79歳、なおも音楽に対する真摯(しんし)な姿勢を少しも崩さず、他の参加者と一緒に受講しておられました。ですから、フェネルさんの発する言葉には、大変な重みがありました。そこから、吹奏楽に対する向学心は一生、続けられるものだし、ずっと続けていかなければならないのだと痛感しました。大変有り難い思い出です。

プロフィル

おくやま・たいぞう 兵庫・神戸市に生まれる。武蔵野音楽大学卒業。1984年、第1回日本管打楽器コンクールに入選し、86年に東京佼成ウインドオーケストラに入団後は、同ソリストとしてマルチェロの「協奏曲ニ短調」はじめ多数の楽曲を全国各地で演奏してきた。2008年にDVD「Winds 楽器別上達クリニック『トランペット・マスター』」をリリース。現在、昭和音楽大学講師、日本トランペット協会常任理事などを務める。