TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・大浦綾子さん Vol.3
フランスにルーツを持つ相棒
――大浦さんの愛車はフランス車ですが、これも何か関係が?
いえ。これはただ単に、車が好きなだけです。プジョー206という車なのですが、「ピエール」という名前を付けて、大事に乗っています。約10年前、中古で買ったのがピエール1号で、長崎での演奏会に行くために、東京から車で出掛けたこともありましたね。いつ止まってもおかしくないほど長く乗っていたので、仕事に支障が出ては困ると思い、新しい車を買おうと考えたんですけど……ピエール以上にかわいい車がどうしても見つからなくて、全く同じ車種、同じ色の車を中古で探して買いました。ピエール2号です(笑)。
実は昨年、ピエール2号を手放す時期が近いと考えて、新たな相棒「クリスチーヌ」を手に入れました。プジョー208です。でも、やっぱり、愛着のあるピエール2号と別れるのがつらくて、今は平等に愛情を注ぐため、交互に運転するようにしています。
――最後に、吹奏楽に取り組む中高生に向けて一言お願いします
中高生だと、まだまだ技術的な面で足りないなあと悩んだり、落ち込んだりすることも少なくないと思います。ただ、そうした中でも、最終的な目的を、技術の向上、楽器をうまく吹きこなすことだけにしないで、その先にあるもっと大事な、「何のために楽器を吹くのか」ということを考えてみてほしいですね。
今回のようなインタビュー取材を受ける中で、「大浦さんにとって、クラリネットとは何ですか?」と、聞かれることがあります。そうした時、拍子抜けするかもしれないのですが、私は「音楽を奏でるための手段です」と答えます。私の場合、音楽と共に人生を歩もうとは思っていますが、クラリネットそのものは人生だとは思っていません。もちろん、クラリネットの音が大好きですし、私にとって思い入れのある特別な楽器です。でも、音楽を表現するための手段が、自分には縁あってクラリネットだったというだけなんです。
私が語学を上達したいと思う気持ちも、言葉を上手に話すことが目的ではなく、自分の気持ちを相手に伝えたい、相手の思いを理解したいという気持ちが先にあります。音楽を通じて、自分は何を伝えたいのか……それは、ある人にとっては作品を通じて自分が感じた喜びかもしれませんし、作曲者の心の内を想像して、その喜怒哀楽を追体験した時の感覚、感情かもしれません。そうした、自分は音楽を通して何を伝えたいのかを、意識して音楽と向き合ってみてください。大きな目標を持つと、きっと、より深く音楽を楽しみ、味わうことができるようになると思います。
プロフィル
おおうら・あやこ 香川・高松市に生まれる。武蔵野音楽大学卒業、東京藝術大学大学院修了。在学中からフリー奏者として活動を始め、1990年からフランスに留学。92年、パリ12区コンセルヴァトワールを一等賞で卒業。2001年に東京佼成ウインドオーケストラに入団。10年には、デビュー20周年記念リサイタルを浜離宮朝日ホールで開催し、同時にソロアルバム「Grand Duo Concertant」をリリースした。現在、洗足学園音楽大学客員教授を務める。