TKWO――音楽とともにある人生♪ ユーフォニアム・岩黒綾乃さん Vol.1
中学生で出合った大切な一曲
――学校ではユーフォニアム、自宅ではピアノを練習したのですね
そうです。ただ、ピアノは続けていましたが、クラブ活動でユーフォニアムに触れる時間の方が長くなりました。体を動かすのが好きで、中学では運動部に入ろうと考えていたのですが、入学してすぐに金管バンドで一緒だった先輩から吹奏楽部に誘われ、そのまま入部することになってしまいました。進んで入ったわけではなく、せめて新しい楽器にチャレンジしようとも思ったのですが、経験者という理由で、ユーフォニアムパートに。これも、言われるがまま受け入れました。
――当初は、こだわりがあったわけではないのですね。ユーフォニアムに愛着が芽生えたのはいつ頃ですか?
中学3年生の頃だと思います。全日本吹奏楽コンクールで演奏する自由曲(各学校が自由に決める演奏曲目)が、カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」になりました。この曲には、ユーフォニアムのソロパートがあります。曲が決まった段階で、自分にソロを吹き切る自信はありませんでした。
しかし、「顧問の先生は、私にソロを任せてもいいと思えるぐらい期待してくれているんだ」と自分に言い聞かせました。その期待に応えようと気持ちを切り替えると、自然と練習に力が入りましたね。演奏表現を豊かにしたいと思い、さまざまな音楽を聴くようにもなりました。
そうした中で、次第に、ユーフォニアムにはアンサンブル(合奏)からソロまで、幅広い役割が与えられていて、楽団の演奏を彩る素晴らしい楽器だと気づいたのです。同時に、〈もっとうまくなりたい、もっと良い音を出したい……〉という意欲が湧いていきました。今振り返ると、この向上心が高まっていった時期に、楽器に対する愛着も芽生えたのだと思います。
この年、私たちの吹奏楽部は全日本吹奏楽コンクールの全国大会に出場し、銀賞を頂くことができました。とても不思議なことですが、高校の吹奏楽部でも、3年生で出場したコンクールで「カルミナ・ブラーナ」を演奏することになったのです。その時の全国大会では金賞を頂きました。そうしたことがあり「カルミナ・ブラーナ」は、生涯忘れることのない曲になりました。
プロフィル
いわくろ・あやの 富山・高岡市出身。国立音楽大学卒業後フリーランスのユーフォニアム奏者として活動を始める。第18回日本管打楽器コンクールで第1位。2004年からパリ国立高等音楽院に留学し、07年に最優秀成績で卒業した。帰国後、08年にTKWO入団。ソロ、室内楽、吹奏楽、オーケストラなど多方面で活動し、13年にはソロアルバム「Fantasie Concertante」をリリースした。これまでに、ユーフォニアムを三浦徹、ユーフォニアムとサクソルンバスをP.フリッチュ、J‐L.プチプレの各氏に師事。現在、大学や高校で講師を務める。