TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・原浩介さん Vol.2
二種類の楽器を扱う中で見えてくるもの
――大変な中で工夫していることはありますか
楽団の演奏中に楽器を持ち替えた時、ラグ(遅延)が起きないように意識して、普段から、それぞれの楽器を吹く感覚を磨きつつ、同時にその感覚がバラバラにならないよう、擦り合わせるように心がけて練習しています。演奏会を想定して、自然に体が反応できるようにしているというんですかね。
だから練習では、今日はB♭管の曲をやって、明日はコントラバスの曲をというように、分けて練習をしません。一回の練習でB♭管から音を出し始めて、次にコントラバスを吹いて、またB♭管に戻ってと、普段の練習からできるだけ交互に吹くようにしているのです。
他には、リードへのこだわりですね。その日の演奏曲によって、選ぶリードを変えています。初めにB♭管を吹くと良い音がして、反応が良いリードでも、コントラバスを吹いてからB♭管を吹くと、どうもしっくりこないリードがあります。これとは反対に、B♭管だけ吹くと良い音が出ないのに、持ち替えると反応が良いリードもあります。そうなので、「B♭管だけ吹く時」「コントラバスだけ吹く時」「B♭管からコントラバスに持ち替える曲が多い時」「コントラバスからB♭管に持ち替える時」と、リードを分けています。
リード楽器の奏者にとって、最良のリードを見つけることが重要ですが、実際には大変なことです。10枚中1枚、いいリードがあるかないかという確率ですから。楽器本体の状態がどんなに良くても、リード一つで演奏が変わってくるので、いつも頭を悩ませます。さらに、僕の場合は選別の基準が「持ち替えること」を前提にしているので、他の奏者と比べると特殊ですよね。
二つの楽器を演奏するのは大変で、苦労が多いと感じたことがあったのですが、今となっては、B♭管とコントラバスを使いこなせることが自分の強み。「僕だけの仕事」という自信と自負心が芽生えてきました。
――B♭管とコントラバスで「役割が違う」という話がありました。違う役割を担うからこその発見はありますか
徐々に視野というか、この場合は聴覚ですかね。それが広がってきました。
アンサンブルの中では、それぞれが担う役割に応じて、他人が奏でる音の中で「意識する音」があります。
例えば、メロディーを担うことが多い楽器の奏者だと、連動して同じリズムを奏でている他のメロディー楽器の音を意識します。それは低音パートも同じで、自分と同じような役割の低音を聴こうとしがちです。それは、自分の音と、他の人が奏でる音とがズレることなく、調和しなければならないために必要なことなのですが、そうすると、自分の耳が必要な音だけを聴こうとし、他の情報をあまり意識していない場合があるんですよね。
音楽は土台である低音があって、メロディが引き立ちます。自分の奏でるメロディと連動する音だけを聞いて細々と合わせようとするよりも、低音を聞いて、全体のバランスを聴きながら自分の演奏をする方が、音が響き合います。自分には、主旋律を奏でるB♭管と、低音を担うコントラバスという、どちらの役割もあるからこそ、より広く聴こうとしているのだと、気づきました。