TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・原浩介さん Vol.2

中学生の頃からTKWOに入団することを目指していたクラリネット奏者・原浩介さん。TKWOでは、B♭管のクラリネットとコントラバスクラリネットの両方を使いこなす。それぞれの楽器の特徴や、異なる二つの楽器を演奏する“二刀流”ならではの醍醐味(だいごみ)を紹介する。

二刀流の大変さ

――現在、佼成ウインドではB♭管のクラリネット(B♭管)とコントラバスクラリネット(コントラバス)の持ち替えで演奏されていますが、二つの楽器の違いとは

見た目で分かる通り、コントラバスクラリネットはクラリネットより随分大きいでしょう。それに伴って、吹き口に付けるマウスピースもリードも大きさが異なります。

B♭管に比べてコントラバスは2オクターブ低い音が出ますから、編成の中では、主旋律を担当するB♭管と低音を吹くコントラバスというように、役割も異なります。二つの楽器はクラリネットという分類としては一緒ですが、あまりにも大きさが違い過ぎるので、別の種類の楽器ともいわれています。

二つの楽器は「別物」といわれるほどですから、奏者の吹き方も変わってきます。詳しく説明すると、口の形と息の入れ方が違うんです。

まず、B♭管よりもコントラバスの方が本体の管が長いので、吹き込む息の量がより必要になります。口の使い方ですが、コントラバスを吹いた後にB♭管を吹くということは、コントラバス用に開けた口をより小さなB♭管用に閉じなければいけません。B♭管は、よりしっかりくわえて吹きます。下唇を圧迫するため、長時間吹き続けていると痛みが生じてくるほどです。

二つの楽器は、口の筋肉の使い方がそれぞれ違っていて、演奏会でどちらも吹かなければならない時は、バランスを取るのがとても難しいですね。5キロの物を、より重い10キロの物を持った後に持つと軽く感じるように、コントラバスのマウスピースをくわえた後にB♭管のマウスピースを加えるとより小さく感じ、逆はコントラバスのマウスピースがとても大きく感じます。正確な感覚をつかみにくいんですよね。人にもよると思いますが、僕は小さいB♭管の次にコントラバスを吹く方が、何も考えずに自然に切り替えられます。でも、逆の場合は、とても神経を使います。

――二刀流だからこその大変さですね

そうなんですよ(笑)。この大変さを分かってほしいですね。

一つの演奏会でB♭管とコントラバスを交互に吹くことがあるんですが、口の形をそのたびに変えなくてはならないので、正しい吹き方がどうだったかが分からなくなって、こんがらがってしまうなんてことが、実は入団当初はありました。内緒ですけど(笑)。

力みや緊張から、奏者が意図していない音が出てしまうリードミスが、他の楽器よりもクラリネットは生じやすいことで知られています。二つの楽器を交互に吹く時は、普段以上に神経を使うために余計な力が入ったり、過度に緊張したりしてリードミスが起きやすくなり、音程も取りにくくなってきます。プロとして、「変な音は出してはいけない」というプレッシャーが当然あったので、演奏会のたびに四苦八苦していました。今は4年目になり、自分の中で感覚がつかめ、安定しています。

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