TKWO――音楽とともにある人生♪ ホルン・上原宏さん Vol.3

光と音の芸術に魅せられて

――突き詰めていくのがとても大事なのですね。厳しい世界だと感じます。のめり込むといえば、上原さんは毎年、東京・青梅市などで花火大会を主催されていると聞きました。花火師の資格も取得されたとか。

大学生の時、出身高校の吹奏楽部の合宿に行って、最後の晩に花火大会をするのが恒例でした。そのうち、場を盛り上げようと、間髪入れずに花火が打ち上がるよう、危険を伴わない範囲で、導火線をつなぎ合わせるなどの簡単な細工を施すようになったのです。そうやって上がった花火を撮影して、もっと盛り上げるためにはどうしようかと考えるようになりました。市販の花火は、一般の人が使っても安全なように火薬の使用量を制限していますから、その分、明るさや色の数も決まってきます。<これ以上やるには、“本物の花火”をやるしかない>。そう思い、花火問屋の人に手ほどきを受けて、花火を打ち上げるために必要な免許を取りました。

はじめは、一発ずつ打ち上げていました。それが、横浜で行われた世界の花火を打ち上げるショーに足を運び、コンピューター制御によって音楽にシンクロさせて打ち上げる花火を見て、心に火がつきました。約20年前のことです。自分もやってみようと、東京ディズニーランドのショーで使用しているコンピューター機材と同じものを購入し、のめり込んでいきました。

花火大会では、バックに音楽が使われることが多いのですが、一般的に使われている音楽に納得できないものがありました。やはり、名曲といわれる、クラシック作品に合わせて、美しい仕掛け花火を打ち上げたいと思ったのです。音楽と花火のシンクロ――これは、オペラやバレエの舞台と同じように「総合芸術」ではないかと私は思っていて、おこがましいですが、その監督のような感覚で取り組んでいます。

私は打ち上げることはできますが、花火を作ることはできません。花火作りは、その道のプロの方が担います。花火を通じて、その製作者の方とお付き合いをさせて頂く中で、お互いに相手の持ち味に面白さを感じるようになりました。その花火業者さんは、私が使う音楽や花火の色、打ち上げのタイミングに興味を持ってくれていて、それを意識して花火作りを担ってくれるまでの関係になりました。優れたものをつくるために刺激し合って切磋琢磨(せっさたくま)するのは、音楽にせよ、花火にせよ、とても楽しいですね。

――最後に、吹奏楽に携わっている方々に向けてアドバイスを

中学や高校で吹奏楽部に所属していると、コンクールに向けた課題曲の演奏が大きな目標になると思います。本番当日で良い演奏をするために、技術の向上に努め、それぞれがコンディションの調整を図っていくことは大切なことです。ぜひ、そのまま、続けてほしいと思います。

これに加えて、もう一つ心に留めてほしいことがあります。それは、演奏が生身の人間によって行われることの意味です。日々の生き方や、物事に向き合う姿勢など、その人の全てが音に表れると私は思っています。演奏する一音一音に気持ちを込めるとともに、日々の生活を大切にしてほしいですね。

音楽は、自分を成長させてくれます。楽しむことを忘れず、一生懸命に打ち込んでほしい。そう願っています。

プロフィル

うえはら・ひろし 1966年、東京・武蔵野市生まれ。桐朋学園大学研究科を修了し、シエナ・ウインド・オーケストラを経て、1991年に東京佼成ウインドオーケストラに入団する。現在、桐朋学園大学教授、昭和音楽大学・昭和音楽大学短期大学講師、武蔵野市民交響楽団アンサンブル・ダ・カーポ常任指揮者、東芝府中吹奏楽団音楽監督などを務める。