TKWO――音楽とともにある人生♪ ホルン・上原宏さん Vol.3

夜空を彩る花火。地上には、ホルン奏者の上原さんの姿がある。花火師の資格も持ち、時に、打ち上げ花火と音楽を融合させた華麗なショーを手掛けている。興味をもったらのめり込み、突き詰めていく性格だ。今回は、演奏家として音楽に懸ける情熱と、花火を通して広がる表現活動の可能性について語る。

聴衆を引き込む演奏を常に意識して

――演奏の際にどのようなことを心がけていますか?

演奏では当然、言葉を使うことはできませんが、演奏は楽器を通した観客への「喋(しゃべ)り」「語り」だと思っています。ですから、相手に伝わるように思いを込め、それを音に表現して奏でることを心がけています。「喋る」「語る」ように、一音、一音に表情をつけるということです。

楽譜には音符が並んでいますが、それぞれの音符それぞれに対して、「強く吹く」「弱く吹く」「メリハリをつけた方がいい」「柔らかく」などの指示が細かく記されていませんから、例えば、楽譜に「C(ド)」の音が記されていたとしたら、どの曲でも、同じ吹き方で「C」を奏でればいいということになります。楽器の覚えたてのように、リズムに合わせて音階を間違えなければ、曲を奏でたことにはなるわけです。

しかし、それでは音楽の素晴らしさは伝わりません。ですから、奏者には、曲を解釈し、前後の音とのつながりを考え、その一音に「強く」とか「弱く」とか、「メリハリをつける」「柔らかく」などの表情をつけて吹くことが求められます。一音、一音を大切にすることによって、演奏全体がより良いものになるのです。

――演奏者には、読解力と表現力、技術が求められますね

そうですね。指揮者はというと、自分で音を出すことはできませんが、頭の中に作品の世界観をイメージし、作曲家が示した設計図(楽譜)を基に、その世界を奏者に的確に伝え、ハーモニーを仕立てます。私は指揮も務めることがありますから、そうした指揮者の視点で楽曲全体をイメージして、ホルンの演奏に生かしています。東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の定期演奏会のリハーサルは通常3日間あるのですが、その時は、毎日吹き方を変えてみるなど常にチャレンジを忘れず、一番良い表現を探り、本番に備えます。

演奏者にとって、技術的に難しいパッセージ(一節)が演奏できることも大事な要素だとは思います。しかし、指が速く動くなど、テクニックだけを取って、良い演奏かどうかを語ることはできないというのが私の考えです。作品に込められた作曲家の意図を理解し、忠実に表現できるか、人を引き付けるための演奏方法を的確に選択し表現できるか――これがプロとして一番大切なことだと思っています。

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