TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・林裕子さん Vol.3

林裕子さんはソロパートを演奏することも多い。最近、過度な緊張を抑えるための秘訣(ひけつ)が見つかったという。さらに、趣味のバレエを通して、ファンへの思いがさらに深まったエピソードを聞いた。

クラリネットを吹き続けてようやく緊張しない秘訣を発見

――クラリネットはソロの多い楽器ですが、やはり緊張されますか

学生の頃やプロになりたての頃に比べると、舞台に立つ回数を重ねた分、緊張しなくなりました。でも、ソロでの演奏となると、楽団の名前を背負って演奏するので、やはり、とても緊張していました。それで、メンタルを鍛えるための勉強もしました。ようやく最近、緊張を減らす方法を見つけました。実は、練習に秘訣がありました。

本番までに自分が納得するまでとことん練習をしていないと、舞台に出た時に無駄に緊張することが分かったのです。これまでの練習では、ある一定ライン以上の演奏ができたら、「これでよし」としてしまうことがありました。でもそれって、自分ができる限りの練習をやり尽くしたかといったら、そうではないんですよね。そのことに気づいたのが、今年入ってすぐに行われた定期演奏会でした。

「ローマの松」という演奏時間が長くて、クラリネットのソロが奏でられる有名な曲が演目に入っていました。自分でも、緊張するに違いないと思って本番に臨んだのですが、意外と冷静に吹くことができました。「なぜだろう」と考えましたが、その時は緊張しなかった理由が分かりませんでした。ただ、その後も緊張せずにできたことが続き、ふと思い浮かんだのです。「ローマの松」でソロを担当すると決まった時に、覚悟を決め、納得がいくまでとことん練習したのです。リハーサルが始まるまでには、自分ができることは全てやったという自負がありました。

緊張するかしないかは、本番に臨む自分の気持ち次第だということは、以前から感じていました。とはいえ、気持ちを強く持ったところで、緊張する悩みから抜け出せなかったんですよね。練習をしっかりして、自分で納得のいく準備がきちんとできているかが重要だったことに、23年間クラリネットを吹き続けて、やっと気づきました。

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――メンタルを鍛えるためには、どのようなことをしたのですか

最初は、自己啓発本や専門家、女優の方などが体験をつづった本をひたすら読んでいました。読んでいくうちに、そうした人たちに共通点があることを見つけました。皆さん、自分の専門分野で活躍するためにできる限りのことをし尽くして、極めている。のみ込みが早い天才肌の人もいるかもしれませんが、努力なしに才能だけで、その世界のトップクラスに上り詰めた人はいませんでした。さまざまな人の本を読んで、励まされ、少しでも自分に生かせることはないかを探すことができました。

一方で、バランスよく精神を保つにはリラックスも必要です。公演日の前日や当日はどうしても緊張状態にありますから、自分のトゲトゲしている心をなだめるために、好きなものを見るようにしています。例えば、趣味でバレエを学んでいるので、バレエダンサーが載っている本やファッション誌を読むとか、そんなにページを開かなくても持ち歩くだけで気持ちが落ち着くので、そうするときもあります。他にも癒やされるのは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で話題になっている「まる」という柴犬です。とても可愛くて、写真集がいくつか出ているので、それを見ることもあります。

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