TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・林裕子さん Vol.2

祖母の家でピアノに親しみ、その後、本格的にピアノを習い始めた林裕子さん。中学生の時にクラリネットと出合った。今回は、音楽への考え方を大きく変えたフランス留学の体験やTKWOに入団した当時の思い出を語る。

フランスに留学し 音楽に対する見方が変化

――高校でも音楽を続けたのですか

通っていた中学校の目の前に、音楽科のある高校がありました。毎日、その高校から漏れてくる練習や合奏の音を聞いて、自然とその学校に自分は行くんだと思うようになり、実際にその音楽科に進みました。

――その頃からすでに将来の夢はクラリネット奏者に?

そうですね。その高校の音楽科に通うほとんどの生徒は、音大(音楽大学)に進学していましたから、自分も音大に進もうと。そうなると、奏者になるんだと漠然とですが思っていました。

その後、国立音楽大学に進学し、卒業した年にフランスに留学しました。大学の時に師事していた先生は26年間フランスに住んだ経験があり、私が先生に出会った頃は帰国したばかりでした。先生には、会うたびに「フランスはいいよ」と言われていました。次第に私もフランスに行きたいと思うようになり、大学院に進学するかどうかも迷いましたが、「行くなら今しかない」と留学を決めたのです。

フランスでは、オルネイ地方音楽院とラヴェル音楽院の二つの学校に行き、3年間勉強しました。

――留学して感じたことは?

良くも悪くも自由を知ったといいますか、型にはまらない演奏を知りました。もちろんスタイルは守らなければいけませんが。私の個人的なイメージですが、留学を経て感じたのは、日本人は、仕事でもプライベートでも、「こうしなければいけない」という型にはめて、ものを考える傾向が強いようです。

ですが、向こうの人は、自由に、自分の生きたいように生きているように見えるんですよね。フランスの街ではよく道端や駅で演奏している人がいます。決して上手ではないんです。音程は外れているし、音色もきれいとは言い難い。アコーディオンを弾いている人の鍵盤は、修理代がなくて外れていることもありました。だけど、その奏者の前にはたくさんの人だかりができていて、みんな笑顔なんですよね。

そこで気づいたんです。確かにプロの奏者は技術を磨き、楽器を良好な状態にし、最高の演奏をお客さんに届けなければいけません。でも同時に、音楽って楽しむことを忘れちゃいけないって。真面目に演奏して、真面目に聴くだけではなく、下手だろうがなんだろうが、技術に関係なく、音楽へのとっかかりは純粋に楽しむことなのだと留学して学びました。

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