TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・林裕子さん Vol.2

音楽は国境を越え 人々を笑顔にする力

――このほかにも、海外ならではの体験はありましたか

留学中に、チェコの演奏会に参加した時のことです。演奏中、観客の人たちはニコニコしながら聴いてくださって、演奏終了後、その方たちに囲まれて、話し掛けられたのですが、私はチェコ語が全然分かりません。でも笑顔なので、きっと、「よかったよ」と言葉を掛けてくださったのだと思います。その時、たとえ言葉が通じなくても、音楽で人々を笑顔にすることができると実感しました。

それは今でも感じることがあります。佼成ウインドは海外で演奏することもありますが、現地の人たちは、私たちをとても歓迎してくださり、喜んでくださいます。国を越えて分かち合えるという音楽の魅力ですね。

――佼成ウインドに入団したのはいつ頃ですか

ちょうど私が帰国してすぐに、クラリネットの募集をしていたので、応募しました。2004年に入団して、今年で13年目になりますが、記憶に残る思い出の一つは駆け出しの頃ですね。

プロの世界に入り、右も左も分からない中で、毎日のように公演が続きました。それまでは、自分が人前で演奏する機会は数カ月に1回ほどでした。ですが、私が入団した頃はちょうどツアーの時期で、移動しては演奏会の毎日だったのです。衣装を買うところから始まり、スケジュールについていくだけで精いっぱいでした。同期の女性奏者と励まし合いながら、夢中で走りました。

実は佼成ウインドとは、入団するずっと前に縁があったんですよ。中学生の時、佼成ウインドが私の学校を訪れ、演奏を行ったのです。コンクールの課題曲とバッハ作曲の「トッカータとフーガ ニ短調」を聴いた記憶は今も残っています。その時の指揮者は、フレデリック・フェネルさんでした。佼成ウインドの桂冠指揮者を務め、吹奏楽の新たな世界を切り開いたアメリカ出身の指揮者です。「えっ、佼成ウインドが来るの?」と、驚きとともに、吹奏楽部の部員たちと喜んだのを覚えています。それから後に、自分が奏者の側にいるとは考えもしませんでしたけど(笑)。

プロフィル

はやし・ゆうこ 1977年、香川・高松市生まれ。国立音楽大学を卒業後、フランスに3年間留学し、オルネイ地方音楽院、ラヴェル音楽院を卒業。留学中、ベラン音楽コンクール1等賞、ピカルディー音楽コンクール1等賞を受賞した。現在、TKWOでB♭クラリネットのセクションリーダーを務める。