TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトクラリネット・新井清史さん Vol.2
「女子にモテたい」――その思いから始まった新井清史さんの演奏家人生。高校時代にはトランペットからクラリネットに楽器を持ち替え、英国出身のプロ奏者の演奏を聴いたことで、音楽大学(音大)への進学を決めた。音大時代の思い出や佼成ウインドオーケストラ(TKWO)との出合いとは。
学生生活を満喫しつつ、練習に励んだ大学時代
――プロの奏者を意識したのはいつですか
音大に入ると決めた時から、プロ奏者として演奏することをイメージしていました。だから、そうなるために、大学に進学してからは、5分でも10分でも時間さえあればクラリネットを吹きました。また、当時は今ほど音を出しても厳しいことを言われる時代ではなかったので、夜中に音を出せる場所を探して懸命に練習しました。とにかくクラリネットがうまくなりたい――その一心で、寝る時間を削って、努力を惜しみませんでした。
だからといって、音楽だけの生活かというと、そうでもありません。クラリネットの練習ばかりだと、内に閉じこもってしまいますから、普通の大学生と同じように友達と遊ぶ時は遊ぶことにし、アルバイトもしてキャンパスライフを楽しみました。
車が好きだったので、中古車を購入し、よくボンネットを開けて、調整するといったこともしていましたね。音楽以外のことをたくさん経験したことで考え方や視野が広がり、それが音楽にも良い影響を及ぼしたのではと感じています。
――クラリネットには、音域や音色の違うさまざまな種類がある中で、アルトクラリネットを吹かれていますね
高校時代は、クラリネットと言えばこれを思い浮かべるほど、最も標準的なB♭クラリネットを吹いていました。音大に入学し、吹奏楽の授業で本当はクラリネットの中でも目立つ、通称「エスクラ」と言われるE♭クラリネットを吹きたかったのですが、大学2年生の時の演奏会前に、担当の楽器を決めるじゃんけんに負けてしまい、最後まで残ったアルトクラリネットを吹くことになったのです。
でも、いざアルトクラリネットを吹いてみると、音が全然出ませんでした。<トランペットもB♭クラリネットも吹けたのに……>と、とにかく悔しくて、大学のレッスン以上に熱中し、ひたすら練習しました。音が出るようになった時は本当にうれしくて、<この楽器、楽しいな>って思えたのです。
あの時、じゃんけんに勝つ、あるいはアルトクラリネットを「音も出ないし、つまらない楽器」と思って練習に打ち込んでいなければ、今、佼成ウインドに在籍していなかったでしょう。振り返ってみると、不思議です。