TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトクラリネット・新井清史さん Vol.1

人生を決めた、ある“出来事”

――それはどんな出来事だったのですか

10月の文化祭で例年と同じようにトランペットを吹いたんです。当時、部活のほかにクラリネットのレッスンを受けていたのですが、翌日、そのレッスンで音の調子が悪かったのか、先生に「どうした?」と心配されました。「昨日、文化祭でトランペットを吹きました」と答えると、「ばかやろう。大事な時期に何やってるんだ!」とひどく叱られました。

実は、文化祭の半年ほど前のこと。ちょうど高校3年に進級する時に、レッスンの先生と共にイギリス人のクラリネット奏者の演奏会に行きました。その演奏会で心が揺さぶられ、先生にその場で、「音大(音楽大学)に行きます」って宣言したのです。

先生は、クラリネットの音が徐々に出来上がってきたのに、受験を数カ月後に控えた一番大事な時期に他の楽器を吹くと、マウスピースや吹き方の違いなどでクラリネットの演奏に影響が出るということを丁寧に説明してくれました。ぼくとしても、とても納得できたので、それからはクラリネットだけに専念しました。

プロフィル

あらい・きよし 1958年、東京都生まれ。国立音楽大学在学中に東京クラリネット・アンサンブルのメンバーになり演奏活動を始める。同大学を卒業後はオーケストラやソロなどフリーランスとして活動した。93年、東京佼成ウインドオーケストラに入団。現在、洗足学園音楽大学非常勤講師、日本クラリネット協会執行理事を務める。