地球と共生する文明の未来を考える 京都造形芸術大学教授・竹村眞一氏
現在、CO2の二大排出国は中国とアメリカで、両国で世界の半分近くを占めています。しかし、今最も急速にグリーン化しているのも、実はこの2カ国です。
アメリカでは、グーグルやアップルなどのIT企業が太陽光発電などによる再生可能エネルギーを積極的に導入することで、CO2の排出量が急速に減っています。一方、中国では05年から風力発電に力を入れ、5年で原発の発電量を抜くほどに成長しています。中国は今や、世界一の風力発電大国となり、再生可能エネルギーで国内の電力を供給できる道筋が見えたことから、パリ協定を真っ先に批准しました。
世界の中で温暖化対策が遅れている日本ですが、太陽光発電といった再生可能エネルギー技術に対する希望の道を初期に開いたのは日本です。温暖化問題と、それに伴うエネルギー問題の解決の見通しが立ち始めている現代において、日本の果たし得る役割はたくさんあります。
現代の若者の中には、「文明がこんなに発達したのに、環境は破壊され、格差は広がる悲惨な世界で、私たちは何をすればいいの」と嘆く人がいますが、白熱電球やガソリン車など、エネルギー効率が不十分で、投入されたエネルギーの99%を無駄に失っている20世紀の文明は、未熟と言わざるを得ません。逆にいえば私たちの文明には、まだまだ大きな伸び代があります。
歴史を振り返れば、農耕革命や都市革命、精神革命、近代科学革命といった人類の知的飛躍は、全て気候変動期でした。今まさに、気候変動というリスクに直面し、第五の革命時期を迎えています。本当にホモ・サピエンスらしい文明を作るのはこれからです。
(1月23日、立正佼成会の法輪閣で行われた「WCRP新春学習会」の基調発題から)
プロフィル
たけむら・しんいち 1959年生まれ。東京大学大学院・文化人類学博士課程を修了後、京都造形芸術大学教授に就任した。NPO法人「Earth Literacy Program」代表理事でもある。地球時代の新たな「人間学」を提起しつつ、ITを駆使した地球環境問題への独自な取り組みを進め、「触れる地球」(2013年内閣総理大臣賞)を企画、制作した。著書に『地球の目線』(PHP新書)、『宇宙樹』(慶應大学出版会)、『新炭素革命』(PHP)など多数。