地球と共生する文明の未来を考える 京都造形芸術大学教授・竹村眞一氏

地球環境と人類が新たな関係を築いていく第一歩として、改めて地球を知ることが大切です。このデジタル地球儀(「触れる地球」)は単なる勉強道具やIT(情報技術)ツールではありません。気象状況や人間活動を可視化することで、地球をより深く理解することができます。

現在、地球における大きな環境問題は、何といってもCO2(二酸化炭素)排出による温暖化にほかなりません。その中で、特に温暖化が急速に進む地域は、北極とヒマラヤ山脈が連なるチベット高原です。先ほど挙げた「アラブの春」も、北極の温暖化に起因していると、世界の科学者の間では議論されています。

ここで、世界各地で多発する異常気象と温暖化の関係について、触れます。天気予報でよく、偏西風(ジェット気流)という言葉を耳にすると思います。赤道付近では暖かい空気が上昇し、低緯度地域と高緯度地域の間で熱の再配分が行われて、全球的な温度の不均衡を調整しようとします。この対流が蛇行するジェット気流を生み出すのですが、北極が温暖化すると、この寒暖差が減り、対流が弱くなるのです。するとジェット気流が遅くなるとともに、気流の蛇行が激しくなります。ロシアの熱波は、北極の温暖化でジェット気流が緩慢になったことで発生し、干ばつが長期化したといわれています。

さらに、温暖化でジェット気流の蛇行が激しくなると、通常よりも南側の暖気が北上し、北側の寒気が南下します。すると、温暖な地域で大雪に見舞われたり、冷涼なはずのロシアが熱波に襲われたりと、特異な天候になります。北極の温暖化だけが原因ではありませんが、急激な気候変動によってジェット気流が変調を来し、異常気象になる――その状況が毎年起こると、異常が平常になってしまうのです。

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