【医学博士・武地一さん】“自分らしさ”を取り戻す つながり育む「認知症カフェ」

認知症はもはや特別な病気ではない。厚生労働省の調べによると、2022年時点で65歳以上の認知症高齢者は約443万人、認知症の前段階の状態とされ、物忘れなどが見られる軽度認知障害(MCI)が認められる高齢者は約559万人に達している。誰もが当事者やその家族になり得る時代にあって、地域で支え合う場として注目されるのが「認知症カフェ」だ。2012年に国が策定した「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」以降の施策の中で推進され、現在全国9千カ所、市町村の9割以上で開設されている。長年、認知症カフェの立ち上げやネットワーク化に関わってきた専門医の武地一さんに、取り組みの内容や目的、地域ケアの在り方について聞いた。

“カフェ”が育む共生社会

――そもそも認知症とはどのような病気なのでしょうか

認知症は、加齢による単なる物忘れとは異なり、記憶力や判断力、理解力といった認知機能が低下した状態を指します。原因となる病気にはアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあり、それぞれ特徴があります。

患者の約7割を占めるアルツハイマー型認知症では「物の置き場所を忘れる」「同じ話を繰り返す」といった症状がよく見られます。物忘れだけでなく、計画的に物事を進める力の低下や言葉の理解・発話が難しくなることもあり、社会生活のさまざまな場面で支障が生じます。

高齢化の進展に伴い認知症への関心は年々高まっています。厚生労働省の推計によると65歳以上の約4人に1人が認知症またはMCIの状態にあるとされ、身近な課題となっています。

――高齢社会の中で国が推進する「認知症カフェ」とは?

認知症になると外出の機会が減り、社会との接点を失い孤立してしまう人が少なくありません。一方で、家族も介護の負担や先の見えない不安を抱え込みがちです。適切な相談先や支援につながれないまま介護疲れが深刻化すると、虐待などの社会問題に発展することもあります。その意味でも、本人と家族の双方を地域で支える仕組みが求められてきました。

そこで全国への普及が推進されたのが、認知症カフェです。この活動は当事者や家族の孤立を防ぎ、地域とのつながりを維持する取り組みで、認知症になっても住み慣れた場所で安心して暮らし続けられる環境づくりの拠点と言えます。市町村や社会福祉法人、NPO法人などが運営し、内容も多様で、認知症に関する講話のほか、音楽イベントや華道教室などの交流プログラムが行われています。

認知症カフェは、単なる交流の場ではありません。同じ立場にある当事者や家族同士が悩みや経験を共有し励まし合うピアサポートの場でもあります。「苦しいのは自分だけではない」と感じられることが、本人や家族の安心につながるのです。スタッフに医療・介護の専門職(ケアマネジャー、看護師など)を置くところも多く、介護や健康相談を行い福祉サービスにつなげる役割を担っています。

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