【東京理科大学研究推進機構総合研究院・関澤愛教授】健康志向が防火につながる 高齢者と火災の意外な関係

安全性に配慮した家庭用品の使用を

――住宅火災に備える心得を教えてください

当たり前のことになりますが、火事を出さない環境づくりが大切になってきます。そのためにも、住宅火災の三大原因であるコンロ・たばこ・暖房器具への配慮が重要です。

出火件数(放火と自殺を除く)の中でも、最も多いガスコンロによる火災では、出火原因の約半数が火の「消し忘れ」によるものです(総務省消防庁「平成29年版消防白書」)。そのため、現在売り出されている「三口ガスコンロ」には、全てのバーナーに「調理油過熱防止装置」などの機能を付けることが、メーカーに義務づけられています。

しかし、コンロの一口にしか安全装置が付いていない古い型のガスコンロを使っている家庭も多く、普及率は6割程度にとどまっています。さらに、料理をする人の中には、油料理などで温度が下がることを嫌がり、あえて安全装置が付いていないコンロの所で調理をする方もいるのです。

最近のガスコンロは、吹きこぼれで火が消えた場合や、地震の揺れを感知したときにはガスが自動的に止まるなど、コンロの安全性も向上しています。全口に安全装置が付いたコンロや、火を使わないIHクッキングヒーターを積極的に使うことも防火につながります。

「フェスク」2017年12月号 住宅火災における燃料別暖房器具火災件数の推移(クリックして拡大)

暖房器具による火災は、特に高齢者が引き起こしやすいケースになります。乾燥しやすい反射式の電気ストーブや、同じく反射式や対流式石油ストーブなどが主な出火の原因となっています。高齢者の中には、昔から使用している石油ストーブで暖を取っている方も多いのですが、古い石油ストーブは前述の反射式などが多いので、温風を出すファンヒーター型のストーブやエアコンに切り替えられればいいのですが……。

たばこによる火災は、価格の値上がりや受動喫煙防止の取り組みで喫煙者の人口が減少しているため、過去40年間一貫して減少し続けています。直接火を使わないたばこも普及していますので、これからますます減っていくでしょう。

――買い替えるとなると、高齢者にとっては負担ですが

ガスコンロは安くはありませんので、故障や転居などの機会がないと、なかなか自分では買い替えないものです。

そこで私がお勧めしているのが、安全な家庭用品のプレゼントです。例えば、離れて住んでいる両親が火災を起こさないか心配な方は、誕生日や「敬老の日」などに安全なガスコンロや暖房器具をプレゼントする。あるいは、料理をする際のエプロン、寝具など、日常使うものを防炎製品に切り替えてもらうためにプレゼントすることから対策を始めるのもいいと思います。

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