【「アース・カンパニー」代表理事・濱川明日香さん】雇用者の働きがいを高め 仕事と生活の調和を推進する 

アース・カンパニー代表理事の濱川氏

今年1月、日本の国際協力NGOの組織強化の取り組みを表彰する「NGO組織強化大賞2017」で、一般社団法人「アース・カンパニー」が働き方改善部門賞および大賞に選ばれた。妊娠や出産、育児、夫の転勤、介護といった理由で仕事を辞めなければならない人が少なくない現代にあって、働き方を改善して雇用者の「働きがい」を高め、組織の強化につなげた取り組みが大いに評価された。雇用者のワークライフバランスを大事にしながら、成果を生み出す組織づくりの秘訣(ひけつ)とは――代表理事である濱川明日香氏に聞いた。

スタッフの生活状況に合わせた働き方

――アース・カンパニーとはどんな団体ですか

世界の自然環境や地域開発に関わる課題の解決に寄与することで、次世代のために、より良い未来の創出を目指す団体です。社会変革を起こす「人」と「団体」を増やそうと、育成、支援活動をしています。

主な取り組みは三つで、一つは、アジア・太平洋の開発途上国において、社会の課題を解決しようとする社会起業家への支援です。二つ目は、社会的企業や社会起業家が集い注目を集めるインドネシアのバリ島ウブドで、社会変革の最前線を見てもらい、現在の課題や、その解決のための取り組みを学ぶ研修事業を行っています。三つ目は社会変革に挑む企業や団体へのコンサルティングサービスです。

――「NGO組織強化大賞2017」の働き方改善部門賞を受賞されました。どのような工夫をしているのですか

今年1月のNGO組織強化大賞授賞式には、理事の菅野文美氏が出席した

アース・カンパニーには事務所がありません。スタッフ全員が自分の好きな場所で仕事をする「リモートワーカー」です。現在、スタッフは東京都と長野県、インドネシアのバリ島に住んで、働いています。また、仕事の時間帯や働く時間を自ら決めることができる「スーパーフレックス」や「パートタイム」を取り入れています。早朝や子供が学校に行っている間、家族が寝静まった後に働くといったように、働く時間帯や労働時間をその人の生活条件に合わせて決めることができます。

こうした働き方を採用しているのは、スタッフの生活状況がそれぞれ違うからです。私は元々、外資系企業で経営コンサルティングの仕事をしていました。その時、妊娠や育児という理由で当たり前に辞めていく女性を多く見ました。当時、パートタイムやリモートワークで働くことができれば、辞めずに仕事を続けられた人も多かったと思います。20代で経験を積み、働く意欲がある女性にとって、キャリアを捨てることは大きな決断です。育児と仕事の両立ができないことによって、子供を産む選択を奪われてしまうことは少子化の原因ともいわれます。社会的、経済的にも大きな損失でしょう。私はそんな状況を間近で見てきたので、お母さんも働ける団体にしたいと思っていました。

そんな考えで団体を運営していると、多くの経験を積んだ優秀な女性が集まってきてくれました。女性スタッフの7人中、4人が小学生以下の子供を育てながら仕事をしています。アース・カンパニーでは、四半期ごとに仕事に対する満足度を調査していますが、常に90%以上を保っています。

超高齢化社会の日本では、高齢者でも、仕事ができるほど元気な方がいる一方で、介護を担わなければならず、仕事との両立に悩む勤労世代の人がいます。通勤は難しくても、自宅であれば働ける人もいます。それぞれに事情を抱えていたとしても、それを障害としない方法を考えていく必要があります。そうすれば、一人ひとりの個性が輝き、社会はより良い方向に進展していくと思います。

◇MEMO
【NGO組織強化大賞とは】
NGOが自らの構想や任務を達成するには、事業の遂行能力の向上とともに、業務の効率化や職場環境の改善などといった組織運営の強化が重要となる。それらの取り組みを表彰し、NGO同士が高め合うことを目的に同賞を設けた。立正佼成会一食(いちじき)平和基金、国際協力NGOセンター(JANIC)が主催。
【社会起業家】
経済面だけでなく、事業を通して環境や地域開発といった課題を解決し、社会貢献しようとする起業家。

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