立正佼成会 庭野日鑛会長 3月の法話から

3月に大聖堂で行われた式典から、庭野日鑛会長の法話を抜粋しました。(文責在編集部)

人間の宿命

「生老病死」という「四苦」を教えて頂いています。お釈迦さまのお説きくださった「苦」は、人間にはどうにもならないこと、思い通りにならないことを指します。特に「生まれること」「老いること」「病気を抱えること」「死ぬこと」という「四苦」はどうにもならないことです。しかし、日本では「苦」という意味合いが、「苦しみ」の方に考えられてしまいがちです。

生まれることも、年を取ることも、病にかかることも、死ぬことも人間の宿命であり、どうにもなりません。人間の自由にはならないこと、それが「四苦」であり、私たちはそういうものを体に持って生まれてきています。そうしたどうにもならない宿命を持っているのです。
 (3月1日)

「おかげさま」に感謝

釈尊が説かれたご法の中に、「縁(よ)りて起こる」、すなわち「縁起(えんぎ)」が教えられています。

全ての現象は、無数の原因や条件、縁が相互に関係し合って成立しているものであり、独立して存在するものはない、というのが縁起の法です。

また、人生は自分の思いで出来上がっているのではなく、全部が自分の思い以外の神仏や周りの人のおかげで成り立っているといえます。ですから、たとえ病気になっても、お医者さんの力や周りの励ましなど、いろいろな方々によって助けられているといえるわけです。

私たちは、自分の人生が「こうしたい」「ああしたい」という自分の思いでもって出来上がっていると受け取りがちですが、どうもそうではないようです。人の支えだけでなく、大自然、まず太陽とか空気とか、いろいろなおかげさまで私たちのいのちはあります。そうしたあらゆるものに感謝していくことが、釈尊の教えの中心ではないかと思うのです。(3月1日)

教えを頂くことの有り難さ

有名な良寛和尚が、「世の中に 何が苦しと 人問はば 御法(みのり)を知らぬ 人と答へよ」という歌を詠まれています。

私たちは縁起の法など仏さまがお説きくださった真理のおかげさまで、いろいろなことに対してどう受け取ればいいかを教えて頂いています。一番苦しいのは、この御法、妙法を知らないことだといわれていますが、私たちは、『法華経』の妙法をすでに頂いている者同士ですから、幸せ者なのです。
(3月1日)

「悲しむ」という心を大切に

「悲しむ」ということは、人間の情緒の最も尊い働きであるといわれます。私たち人間が、自分のことだけでなくて、人さまのことを悲しめるようになるには、よほど精神が発達していなければなりません。人が自分の親、兄弟、子供ばかりでなく、友人のこと、世の中のこと、国のことを悲しむようになってこそ、はじめて文明人であり、文明国であります。

日本の古典では「愛」という字をあてて「愛(かな)しむ」と読みます。日本には、そうした人間の情緒的な機微を表す言葉がたくさんあります。それだけ日本人は、感受性が強いと言えるのかもしれません。

人の悲しみをどうにかしてあげたいという心から、仏さまのご法を人さまにお伝えさせて頂きたいという心も起こってきます。それこそ、仏さまの心、慈悲の心そのものです。本来、私たちも仏さまと同じ心を持たせて頂いているのです。
(3月1日)

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