利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(67) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

盛者の「国葬」

「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛(たけ)き者も遂(つい)にはほろびぬ、偏(ひとえ)に風の前の塵におなじ」(『平家物語』第一巻)

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「第1回庭野平和賞奨励賞」受賞者決定 人々の生活に密着した平和活動に光を

公益財団法人庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)による「第1回庭野平和賞奨励賞」の受賞者がこのほど決定した。受賞したのは人権活動家のルキ・フェルナンド氏(49、スリランカ)、「アクション・ノースイースト・トラスト」(The Ant)共同代表のジェニファー・リアン氏(50、インド)、「グスドゥリアン・ネットワーク」ナショナルディレクターのアリサ・コトルンナダ・ムナワロ・ワヒド氏(50、インドネシア)の3人。9月16日、京都市のホテルで記者会見を開き、席上、庭野理事長が発表した。受賞者には、正賞の賞状と副賞の賞金200万円が贈られる。

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忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(2) 写真・文 猪俣典弘

涙を流しながら日の丸を振り、両陛下をお迎えした彼らは誰なのか

両陛下が最後の「慰霊の旅」でマニラ戦に言及

上皇上皇后両陛下が御在位中、海外での最後の「慰霊の旅」としてフィリピンの土を踏まれたのは2016年1月のことでした。先の大戦で日米両軍によって激しい地上戦が繰り広げられたフィリピンへの訪問は、両陛下の強い願いで実現したそうです。

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バチカンから見た世界(125) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

2人の教皇のカザフスタン訪問――米国同時多発テロからウクライナ侵攻へ

ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世がカザフスタンを訪問したのは、米国同時多発テロの発生から10日後、2001年9月22から25日にかけてだった。東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」が崩壊し、人々が世界平和の到来を信じていた3千年紀の始まりに、世界で宗教の名を語った暴力、憎悪、戦争、テロ、報復が扇動され、世界は「文明の衝突」を叫ばれる暗黒の歴史に逆戻りしていった。

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