ミンダナオに吹く風(21) 日本からの移民 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)
日本からの移民
日本からの訪問者たちと、ミンダナオ子ども図書館で予約をしたホテルに車で向かった。そこは、空港からそれほど遠くない居心地の良いホテルで、裏には日系人会の運営する学校が建っている。
マンゴーやドリアンなど熱帯果物や、ミンダナオの野菜を売っている青果店、鍋に入った料理が並ぶ小さな簡易食堂が連なる坂道を下り、町に入っていく。ふと訪問者は言った。
「道にも子どもの姿がありますし、生活の匂いが至る所にあって、なんだかホッとする風景ですね。マニラよりずっと安全そう」
私は答えた。「ダバオは、マニラよりはるかに安全な街ですよ」。
街に近づくと急に車が増えて、目指すホテルに到着した。訪問者たちは車から降りると、ホテルの裏の建物を見上げて驚いて言った。
「あの建物は、何ですか? 屋根の上に大きく日本語で『ミンダナオ国際大学』と書かれていますけど、ここはフィリピンのミンダナオなのに、なんで日本語の看板が出ているのですか?」
私は、エンジンを止めて車から降りるなり言った。「このホテルの裏には、日系人会がつくった学校が、小学校から大学まであって、日本語教育もなされているんですよ」。
「ミンダナオに、日本語で授業をする学校があるんですか。しかも、小学校から大学まで!」。訪問者のミンダナオ、そしてダバオに対するイメージが、少しずつ変わっていくのが感じられた。
「学校の裏には、日系人会の事務所もありますよ。ミンダナオは、戦前から東南アジアで一番多く日本人が住んでいた島なのです。ダバオの先のカリナン町には日本人学校もあって、今も当時の校舎が記念物として残っています。ミンダナオ国際大学の分校の小学校と高校もカリナンにあって、隣に日本歴史資料館もあるから、明日はそこを通って先住民のいる山に向かいましょう」と私は言った。