ミンダナオに吹く風(17) 魂がこもった「ゆめポッケ」 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)
また、先住民の集落に保育所を建て、その開所式を行ったときにも「ゆめポッケ」を配った。その日は、町から遠い山の集落にまで、わざわざ市長が来てくれて、「ゆめポッケ」を見ながら、大勢の方々の前でこうおっしゃった。
「わたしは、海外からの支援というものは、大半が自国への見返りを求める開発支援だと思っていたのですが、あなた方の支援は見返りを求めない友情の支援なので驚いています」
これぞ、「ゆめポッケ」の本質だろう。言葉にも友情や愛がこもるように、物にもそれを作った人々の魂がこもると思う。そうした友情と愛、そして魂を、戦争や貧困で苦しんでいる人たち、とりわけ未来を担う子どもたちに届けることこそが、「ゆめポッケ」の理念だと感じている。そのお手伝いができるのは、喜び以外のなにものでもない。
もしも日本の全ての学校で「ゆめポッケ」プロジェクトが実施されるようなことになれば、世界の人々、特に近隣のアジアの人々の日本を見る目が変わってくるのでは……。そんな期待を抱いている。
プロフィル
まつい・とも 1953年、東京都生まれ。児童文学者。2003年、フィリピン・ミンダナオ島で、NGO「ミンダナオ子ども図書館」(MCL)を設立。読み語りの活動を中心に、小学校や保育所建設、医療支援、奨学金の付与などを行っている。第3回自由都市・堺 平和貢献賞「奨励賞」を受賞。ミンダナオに関する著書に『手をつなごうよ』(彩流社)、『サンパギータのくびかざり』(今人舎)などがある。近著は『サダムとせかいいち大きなワニ』(今人舎)。