利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(28) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
画・国井 節
令和初の国政選挙で大事なこと
令和時代が始まって、まもなく初の国政選挙を迎える。私たちは、新時代にふさわしい政治をつくっていくことができるだろうか。
まずは各人が現在の政治を自分の目で見て評価した上で、自分自身の観点から投票を考えることが必要である。その際に重要なのは、たまたま見聞したマスメディアからの情報や意見を鵜呑(うの)みにしないことだ。常にこれは大事な点で、今回の選挙では特に意識する必要がある。
平成末期からの政治
平成時代の最後の国政選挙となった2017年の衆議院選挙の後、内政では、自衛隊のイラク派遣における日報の存在が明らかになって政府の文書隠蔽(いんぺい)が疑われ、森友学園問題では財務省決裁文書の改竄(かいざん)が明確になった。そして、カジノ法が成立した。経済政策では、統計不正調査問題が浮上し、実質賃金の低下や景気の悪化が明らかになってきた。年金に頼らずに2000万円が老後に必要だとした金融庁の審議会報告書が問題となった。
外交や国際関係では、沖縄の基地問題で政権が辺野古の工事を強行したのに対して、沖縄では、玉城デニー知事が誕生して対立が激化している。さらに、北方領土をめぐる日ロ交渉は停滞。北朝鮮に対しては政権が無条件の対話への路線転換をしたものの対話ができず、アメリカには大量の武器購入を約束した上に、参議院選挙後に日本は農産物などで経済的譲歩をするとトランプ大統領が示唆した。
つまり、経済ではアベノミクスが行き詰まり、内政では政治の私物化や文書・統計の改竄が疑われて不祥事が続き、重要な外交もほとんど停滞している。ところが政権支持率は50%前後と報じられていて、高い。なぜだろうか。