法華経のこころ(5)

殺戮(せつりく)を好む者には大悲の心を起さしめ(無量義経十功徳品)

「この経は、人を苦しめたり殺生を好む人には、逆に、苦しむ人を助けてやりたいという心を起こさせるのです」。教えを実行する者が得る精神的功徳を説く一節。同時に、日々の心を反省・点検するための持戒ともしたい。

中学2年の時、テニス部主将の座をめぐりK君と張り合った。彼はそんな気分が全く無かったようだが、私は互角で競っているとうぬぼれていた。ところが、選挙では、全員の票がK君へ。悔しかった。その惨敗の原因が得心できたのは、ずっと後のことだった。

人の至らぬ点を感じると許せずに、相手を徹底して責めたて、自らの意見でねじ伏せねば納得できない性格を、いつの頃からか私は身につけていた。部活動の中でも、後輩たちが言うことをきかないと、グラウンド10周の“罰”を与えていた。それに比べK君は、日が暮れてもなお、新入生たちと共に、グラウンド整備のローラーを転がしているような人間だった。

今考えると、K君は私にとって、きょう慢な心を戒め、分け隔てない思いやりの心を教えてくれた最初の“教師”だったように思う。私は苦い思い出と共に、K君の日焼けした笑顔を思いだす。
(M)