食から見た現代(13) 夜のフードパントリー〈後編〉 文・石井光太(作家)

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夜の仕事に従事する女性と子どもへの支援活動を行う任意団体「ハピママメーカープロジェクト」。
前編では、夜の仕事が直面する現状について見てきた。後編では、子どもへの影響について考えていきたい。
ハピママメーカープロジェクトはコロナ禍で生まれた団体だ。だが、コロナ禍が終息した後も、水商売や風俗の不況がつづき、多くの女性たちが民間の支援を頼らざるをえない状況がつづいている。そうしたことが、子どもの貧困につながっているのだ。
実際に夜の街で働く女性たちに話を聞くと、生活費だけでなく、子どもの接し方についての相談を受けることが多いという。同団体の代表理事の石川菜摘氏は話す。
「夜の仕事をしている女性の中には、発達障害や知的障害といったハンディを抱えている人もいます。うちの団体では、そういう女性たちに食糧を提供したり、生活相談に乗ったりもしているのですが、話を聞きながらそれらのハンディが子どもの生活に影響を与えていると感じることがあります」
親の障害が子どもに何を及ぼすのか。
「たとえば、発達障害があるシングルマザーがいたとします。こういう女性は、発達特性から調理の時に毎回決まったものしか作れないということがあります。子どもは毎日同じものばかり食べさせられるので偏食になります。
おそらく一時代前なら、学校の先生は給食を完食させることで、こうした子の偏食を治そうとしたでしょう。しかし今の学校では、『嫌いなものは食べなくていいよ』という方針なので、そのような偏食は放置されてしまいます。そうなると、子どもは一つの決まったもの以外は食べずに育つことになるので、栄養に大きな偏りが出てしまいます。
実際にあった例ですと、ある母親は家の冷蔵庫を常に空にしていて、冷凍庫にアイスクリームだけを入れていたことがありました。母親の偏りが、こういうところに出ているのです。そのせいで、この家の子どもはお腹が空いても、アイスクリームしか食べられませんでした。そんな生活を過ごしていれば、体を壊すのは明らかですよね。そういうことが起こりえるのです」
私も似たような事例を、何度か見かけたことがある。風俗店で働いているある20代の女性は、未婚で3人の子どもを育てていたが、発達障害で集中力がつづかず、一食作るのに4時間も5時間もかかっていた。そのせいで、途中で仕事の時間になったり、子どもが待ちきれずに寝たりするので、ご飯を食べさせることができない。
入浴に関しても、家にはお風呂がないため、近所の銭湯へ行くしかなかったのだが、聴覚過敏があって銭湯の人混みや音に耐えられずに足が遠のいてしまう。これによって、子どもたちは栄養不良、ならびに入浴させてもらえていないということで、最終的には児童相談所によって引き離されることになった。親が抱えているハンディが、このような形で子どもの食生活を不適切なものにすることがあるのだ。
さらに深刻なのは、親だけでなく、子どもにまで発達障害や知的障害があるケースだ。親は自分や生活のことで一杯いっぱいなのに、加えて子どもが似たようなハンディを抱えていれば、育児はより困難になる。実は、そうしたことが少なからず起きているのだという。