ミンダナオに吹く風(17) 魂がこもった「ゆめポッケ」 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)
魂がこもった「ゆめポッケ」
「ミンダナオ子ども図書館」では、すでに10年以上、立正佼成会の子どもたちから送られてくる「ゆめポッケ」を、戦闘の起こる地域のイスラーム教徒や極貧の先住民の子どもたちに届け続けてきた。戦争で親を失った子や、貧困で学用品を買えない子たちにとって「ゆめポッケ」は、物資支援のなかでも心から喜ばれる贈り物だ。それは、受け取った子どもたちの喜び方と笑顔から分かる。
「ゆめポッケ」が、子どもたちをひときわ喜ばせるのは、日本の子たちが一食を抜いて、その食費分をためたお金で、戦争や貧困に苦しむ子どもたちのために、おもちゃや学用品を自ら選ぶなかに、愛や友情がこもっていて、その想いが受け手の子どもたちの心に不思議と伝わるからだろう。
「ゆめポッケ」は、巾着(きんちゃく)の布の色も、なかに込められた贈り物も、一つ一つが異なっている。だから、「ゆめポッケ」を受け取ると子どもたちは抱きしめてしゃがみ込み、そっとひもをほどいて、なかをのぞく。そして、隣の子たちの方も見やりながら、学用品やぬいぐるみを取り出すと、大喜びで手を挙げて光のなかに掲げる。そして、お互いに顔を見合わせて微笑み合う。
子どもたちを喜ばせるのは、巾着のなかに入っている贈り物ばかりではない。色とりどりの巾着袋そのものも、とても喜ばれることが分かってきた。あるイスラームの村を久しぶりに訪れたときのこと。「ゆめポッケ」を配った当時はまだ小学生だったミンダナオ子ども図書館の奨学生に再会した。すでに大学生になっていた。湿原に近いその子の家を訪れたとき、大きくなった彼女は、私たちの顔を見るなり家に飛びこみ、家のなかから大事そうに「ゆめポッケ」の巾着袋を持って出てきた。その子にとって「ゆめポッケ」をもらった思い出そのものが、生涯忘れられない宝物だったのだ。