佼成学園・監督対談 女子ハンドボール部石川監督×男子アメリカンフットボール部小林監督 『勝利に導く指導力』(後編)

今夏のインターハイで優勝した佼成学園女子高校ハンドボール部と、昨年末のクリスマスボウルで初優勝を果たした佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」。部を率いる石川浩和監督と小林孝至監督は、それぞれ指導者として20年以上のキャリアを持つ。『勝利に導く指導力』をテーマに対談の場を設け、両監督に話を聞いた。(文中敬称略)

(前編から続く)

選手を「勝負強くさせる」には

――互いの監督に聞きたいことはありますか?

小林 私からいいですか。アスリートとして基礎からつくり込むという意味で、やはり「心技体」が大事ですよね。体をつくるためには技術の向上も同時に考えなければならず、技術を向上させるには体づくりが必要です。ミスによって弱気になると、それが元で試合が決するなど、精神面が勝負を分けますので、メンタルの強化も欠かせません。

そこで、メンタル面の強化について、石川監督にお伺いしたいと思っていたのですが、選手を「勝負強くさせる」ためにされていることはありますか?

石川 そうですね。選手には、保有能力と発揮能力についての話をよくします。「君たちが持っている保有能力と、試合で発揮できる発揮能力には差があるんだよ。いい選手ほどこの二つの能力の差が少ないんだ」と。そして、試合当日は、「練習ではあえてプレッシャーを与え、ベストの状態を出せないように発揮できる能力を抑えている。だから、今日は暴れてこい」と話して送り出します。試合後には、「今まではこの段階までしか出せていなかったのに、試合ではそれ以上の力が出せた、というのは元々君たちが持っている力だよ」と伝えています。

小林 「練習でできないことは試合ではできない」と言われますが、私は極端に言うと、「練習でできなくても試合でできるようになればいい」という考えを持っています。

石川 ポジティブ思考は重要ですよね。特に女子選手は、一度ミスをすると、マイナス思考に陥ることが多いようです。「次もまたシュートを外したらどうしよう」「先輩や仲間にどう思われるだろう」「先生に何を言われるだろう」とミスを怖がってしまい、プレーが萎縮してしまうのです。

先ほど小林監督が「心技体」とおっしゃいましたが、「心」の部分ではまず、マイナス思考を転換する必要があると思います。そのため、練習中は、シュートを外したら必ず、「次、決めます!」と言わせるようにしています。「どうせ私はダメ」という意識を払拭(ふっしょく)し、「自分にはできる!」と思える精神状態に持っていくのです。

小林 挑戦する気持ちを持たせるわけですね。

石川 そうです。

今度は私から伺います。ハンドボールはアメフットと比べると人数も少なく、個人技と言いますか、ある程度アドリブでプレーしてもいいことになっていますが、大人数で、組織として戦うアメフットは、選手の役割が徹底されています。チームをどのように統率されているのですか?

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