佼成学園・監督対談 女子ハンドボール部石川監督×男子アメリカンフットボール部小林監督 『勝利に導く指導力』(後編)

チームが組織として機能するために

小林 そこが究極的に求められるところで、佼成学園は、多くの協力者のサポートを得て進めることができています。

アメフットは決め事の多いスポーツですが、実はそれらをチーム自ら決めていく自由裁量に特徴があります。ベンチワークのあり方はチームそれぞれですし、フィールドに立てる人数は決まっているものの、ベンチに入る人数に制限はありません。1プレーごとの交代も自由ですから、各チームには、チームの現状を踏まえて、組織として機能するチームづくりが求められます。

キンチョウスタジアム(大阪市)で行われたクリスマスボウルを制した「ロータス」。

攻守の戦術は次々と生み出されており、流行の攻撃戦術や守備の陣形にも対応していかなければいけません。全てのチームが、相手チームの戦術や選手のデータを少なくとも1年前から取っていますから、前年より20%能力を上げないと勝てないと言われています。

その意味で、私にとってはコーチの存在が大きいですね。コーチは、各ポジションの選手を統括していて、精神的なサポートも網羅してくれています。トレーナーが体幹トレーニングなど最先端の科学的なトレーニングを指導してくれ、選手たちは他校に比べて体格で劣っていても、当たりに負けない体になってきました。選手のお母さんたちも食事面などで協力してくれていて、そうした全てが積み重なり、チームの統率につながっているのではないでしょうか。そうした総合力の戦いでもあります。

また、選手たちの気を引き締めるために、うちのチームでは、スターティングメンバーを毎日発表しています。選手は、自分がポジションの何番手に位置しているかを知ることができます。努力を促すとともに、チームの状況と自分の役割をはっきりさせるためのものです。一方、トレーニングや、学校生活の中で手を抜いたりすると、序列がポンと落ちてしまうこともあります。こうして個人の努力の必要性とチームでの役割を自覚するチームづくりを進めています。

石川 緊張感がありますね。

小林 試合の前日にスタメンを発表すると、緊張してしまう選手や下を向いてしまう選手が出てくるので、逆にこの方が気を使わなくていいなと思うようになりました。

石川 上がったり、下がったり、両方経験して慣らすわけですね。

小林 そうですね。合宿の時なんかは朝のメンバー発表をして、また昼にはメンバーが代わります。

石川 手が抜けないですね(笑)。

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