佼成学園・監督対談 女子ハンドボール部石川監督×男子アメリカンフットボール部小林監督 『勝利に導く指導力』(前編)
自律性を養う
――選手への指導で心がけていることは?
石川 選手たちには、「世の中にはゴミを捨てる人もいれば、拾う人もいる。どちら側の人間になるかを自分で選びなさい」と伝えています。生活する上で自らを制御することが、結局、コートの中で生きてくるのです。これは私自身の選手時代の経験からも言えることです。アメフットもボールゲームなので同じ側面があると思うのですが、「これを外したら負ける」「これを入れなければ勝てない」というピンチの場面で、日常生活での自己コントロール力が、瞬時の判断や行動を左右するからです。
例えば、ハンドボールは、シュートの時にラインを踏んではいけないというルールがあります。試合を応援に来た親御さんや一般の方から見ると、「いいシュートだったのにラインを踏んで惜しかったね」と言われますけれど、そうではなく、踏んだら駄目なんです。踏まないようになるために、“自ら”意識して練習をするのです。
自分のプレーの欠点や短所を直すことが、スタートラインになります。そのために何千回、何万回と練習を重ねます。うまくいかなかった時、高校生ですから、人のせいにしてみたり、すぐに言い訳が出てきたりするわけですが、他人を責めるのでなく、自らの責任で為す人間にならなくては、チームを成長させていける選手にはなれません。私は監督として、練習では選手をかなり追い込みます。選手にとっては大変厳しくつらい部活動だと思います。
――練習から緊張感を持たせるわけですね
石川 はい。練習では選手を叱ることもたびたびありますが、叱った後は、「よくなったな」と声を掛けるようにしています。厳しく注意した選手の練習ぶりを、しっかりと見てあげることは当然で、指導者として、そういう触れ合いが大事かなと思います。日々の関わり方次第で選手の成長度合いは変わってくると考えています。
小林 私も駄目なものは駄目と本気で叱りますが、叱りっぱなしにならないよう心がけています。幸い、私自身が佼成学園の出身ですから、選手たちは後輩にあたり、選手だった私のこともよく理解してくれているので、意思疎通が図りやすく、指導しやすい面はあります。
ただ、難しいのは、試合に出られない子や下級生を叱る時ですね。あえて叱らずに様子を見たり、上級生から注意させたりすることもあります。でも、ロータスにはアメフットを本気でやりたい子たちが入部してきていますので、一人ひとりの気持ちを大切にすることを心がけ、全員に部活を続けてもらえるにはどうすればよいかを常々考えています。
レギュラー陣には、「彼らを試合に出せるように、何しろ勝ち続けろ」と伝えています。一方、試合に出られない部員たちは、チームを支えるため、いろいろな仕事をしたり、応援をしたりしてくれていて、その一生懸命な姿がまた、レギュラー陣の「仲間のために頑張ろう」というモチベーションにもなっているのは確かです。