地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(6) NPO法人「かながわ難民定住援助協会」(大和教会が支援)

難民定住者の多い神奈川県で30年続く「大和日本語教室」。授業中は、受講者から活発に質問が飛ぶ

難民の生活を支援するNPO法人「かながわ難民定住援助協会」で4月中旬、一本の電話が鳴った。県内の私立高校に子供を通わせている難民定住者の母親からで、子供が海外研修に行くが、ビザの取り方が分からず困っている、という相談だった。

「難民は国籍がなく、ビザの取得に時間がかかるんです。インドシナ難民定住者が日本に来て38年。日本で誕生した2世、3世は社会に溶け込んでいますが、こうした問題は生活のさまざまな場面で起こり、彼らを悩ませています」。対応に当たった同協会会長の桜井弘子さんはそう語る。

日本語教室や生活・法律相談で自立を支援

1979年から2005年までに日本はベトナム、ラオス、カンボジアから逃れたインドシナ難民1万人強を受け入れ、その3分の1が現在、神奈川県に定住する。同協会は86年、難民の一時的な住まいである「大和定住促進センター」を退所した人々のアフターケアの機関として設立された。
協会では、難民の生活相談のほか、月に1回、弁護士による無料の法律相談を受け付ける。当初は在留資格の更新や結婚手続きなど、簡易的な相談が多かったが、近年は長期的な支援を必要とする複雑な相談が増えているという。

「難民の9割以上がいまだに臨時雇用だと思います。月々の収入が変動し、生活は不安定なままです。日本語能力が不十分なことが、仕事や生活に大きな影響を与えています」と桜井さん。協会は17団体21の日本語教室と連携し、難民の言語習得を後押ししてきた。

週末に大和市保健福祉センターで日本語を教えている「大和日本語教室」もその一つ。習熟度別に7クラスが編成され、外国人200人以上が登録する。

ゴールデンウイーク最終日、習熟度の一番高いクラスの参加者に、30年近く教室に通う難民の男性(58)がいた。男性は、ラオスからタイに逃れ、32年前に来日。会話は流暢(りゅうちょう)なものの、日本語の読み書きに不便を感じ、機械技師として働きながら通い続けているという。

授業の合間、カンボジア出身の受講生が男性に、新聞に包まれたパクチー(香草)を渡そうとした。別の受講生が家庭菜園で育てたもののお裾分けという。男性は、「うちもいっぱいあるから」と笑顔で応じた。受講生同士の交流が持たれ、穏やかな空間が生まれていた。教室は、生活情報を交換し、時には悩みを相談し合う場としての役割も担っている。

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この企画では、立正佼成会「一食(いちじき)地域貢献プロジェクト」が支援する団体の活動を紹介する。

メモ:一食地域貢献プロジェクト

「一食を捧げる運動」の浄財の一部を全国各教会が主体的に活用し、地元のニーズに応えて活動する非営利団体の支援を通して、温かな地域づくりに協力している。なお、「一食を捧げる運動」とは、月に数回食事を抜く、あるいはコーヒーなどの嗜好(しこう)品を控えて、その食費分を献金して国内外の諸課題に役立てる取り組み。
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