東日本大震災「一食三県支援」の現場から 絆をつむぎ支え合う人々(2)

東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島の3県では、各地域で住民たちが復興に向けた取り組みを進めている。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、他府県で暮らす福島からの避難者を支える活動も行われている。立正佼成会一食(いちじき)平和基金では、「東日本大震災三県支援」として、地域の課題の解決や地元のニーズに沿った活動を展開している民間組織や住民組織、NPO法人などをサポートしてきた。震災から6年を迎え、復興に取り組む3団体の活動を紹介する。第2回は、岩手・釜石市のNPO法人「カリタス釜石」。

岩手県 NPO法人「カリタス釜石」

岩手・釜石市では、東日本大震災で1062人が犠牲となり、1万516人が住宅を失った(同市社会福祉協議会調べ)。6年が経った現在、市は来年度までに、計画された全ての復興公営住宅の完成を目指して建設を進めている。一方、仮設住宅団地内で空き住戸が増えている状況を考慮し、66カ所の団地を半分以下にする統廃合を実施している。

湯茶と菓子を提供しながら入居者の話を聞く「お茶っこサロン」

これに伴い、家賃の生じる復興公営住宅への入居や自立再建によって仮設住宅を離れる人が増加。しかし、経済事情により、仮設から別の仮設に転居せざるを得ない住民も少なくない。未来への展望が開けず、これまでのつながりを断たれてしまう人は、「取り残され感」にさいなまれているという。

「“人と人との心の絆”を大事に」を合言葉にNPO法人「カリタス釜石」では、同市社会福祉協議会と連携し、毎月、「お茶っこサロン」を開催してきた。仮設住宅の談話室などで湯茶や菓子を提供しながら入居者の話を聴くことに取り組み、相手の心を癒やす場づくりに励んでいる。

「お茶っこサロン」に携わる髙野桂子さんは、「今になってやっと震災当時のご自身の状況を吐露される方もいます。相手のペースに合わせて話を聴きながら、心を支えていくサロン活動は、これからも必要です」と語る。

人と人とのつながりが笑顔を生む

また、団体の母体であるカトリック釜石教会のオープンスペース「ふぃりあ」を地域住民の憩いのために開放するほか、仮設住宅などを訪問し、被災者の話に耳を傾ける見守り活動を展開してきた。そうした取り組みの一つ一つが被災者の孤立防止につながる。

これらの活動に加え、復興公営住宅に転居してきた住民と、従来からの自治会住民との触れ合いを目的に交流会を実施。震災で失職した夫から暴力をふるわれて悩む女性が多いことに注目して、電話相談や被害女性の生活を支援する事業も行っている。

カリタス釜石の伊瀬副理事長

カリタス釜石の伊瀬聖子副理事長は、「震災からの復興を通して、社会的に弱い立場にある人の権利が擁護され、人のいのちと心が尊重される優しい社会になってほしい。そんな新しい釜石の“まちづくり”に貢献したいのです」と話す。

カリタス釜石の活動に、これまで延べ3万人以上のボランティアが参加してきた。しかし今、被災地を訪れるボランティアが減り続けている。新たな参加者を募るため、震災時にはボランティアに加わることができなかった当時の小学生に、活動の意義を伝えるPRにも力を注いでいる。