庭野光祥次代会長に聞く――『宗教協力が育む力』(3)

光祥次代会長

立正佼成会は、庭野日敬開祖の教えに基づいて、諸宗教対話・協力を平和活動の柱の一つとして取り組んできた。諸宗教対話・協力は現在、多くの宗教者と共に推進され、世界の諸問題の解決に向け、各地で具体的な取り組みが進められている。宗教者が取り組む平和活動の特徴について、また諸宗教対話・協力の活動に参加することで私たち会員が得ている恩恵や功徳について、庭野光祥次代会長に伺った。

宗教者の平和活動は、世界大の公共の利益に貢献するため

――宗教者の平和活動にどのような特徴がありますか

宗教者による平和活動でも、具体的な取り組みやプロセス、成果はもちろん重要ですが、一人ひとりが信仰や教え、自身の内側と真摯(しんし)に向き合いながら取り組むところに特徴があると思います。

また、一般的には「この活動は国益にかなっているか」といったことがよく議論になりますね。でも、全てのいのちを尊ぶというのが宗教者の姿勢ですから、宗教者の活動は国家や民族といった枠を超え、人類や地球全体という、世界大の公共の利益にかなうよう行動していくことが重要です。

世界に目を向けると、宗教的過激主義の問題があり、宗教が要因とみられている対立があります。そのような中で、宗教者が大きな精神性を持ち、宗教や宗派の違いを超えて、これまで以上につながっていくようになればと願っています。

そして、もう一つ。目の前で悩んだり、苦しんだりしている人に丁寧に向き合い、心を込めて対応していくと同時に、長い目で物事を見て、取り組んでいくことも宗教者の活動の特徴ではないでしょうか。私たちが抱えている問題はさまざまな要因が重なり合って起こっていますから、すぐに成果が出ることばかりではありません。多くの人と手を携え、力を合わせていく。このことがますます大事になります。

――多くの人と協力し、誰一人取り残さないという観点が大切なのですね

宗教者は人を差別せず、どの人に対しても平等に慈しみを持って触れ合う。国や民族など個別の利害を超えて地球や人類全体の利益を考えて行動する。私自身は、そうありたいといつも願い、自分に言い聞かせながら活動しています。なぜなら、理想から程遠い利己的な自分を発見するからです。そんな思い通りにならない、至らない自分を超えていきたい。そう強く願っています。

平和活動に取り組む中で、素晴らしい活動をされている国際NGOの方々や、現実の問題に対峙(たいじ)するために、新しいつながりを創造する宗教者の方々の姿を目にします。また、支援に行ったはずのレバノンの難民キャンプでは、私たちの方が助けてもらう経験もしました。

つまり、平和活動は私にとって、いつも自分の小ささ、足りなさを突きつけられる機会でもあるのです。けれどだからこそ、そのたびに、そのちっぽけな自分を超えていきたいと、次へのエネルギーが生まれます。信仰を持つということは、教えに照らして自分を成長させていくこと。それが宗教者の平和活動だと信じています。

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