【特別インタビュー 第35回庭野平和賞受賞団体・アディアン財団 ファディ・ダウ理事長、ナイラ・タバラ副理事長】 中東・レバノンなどで共生教育の普及へ
多様性こそ世界の現実であり、全ての人の調和は教育によって実現できる――その信念のもとに活動し、「第35回庭野平和賞」を受賞したレバノンの国際NGO「アディアン財団」。ファディ・ダウ理事長(47)、ナイラ・タバラ副理事長(46)へのインタビューが5月9日、東京・港区の国際文化会館で行われた。聞き手は公益財団法人・庭野平和財団の庭野浩士理事長が務めた。アディアン財団は、シリアやイスラエルと国境を接し、宗教対立の歴史を持つレバノンを拠点に、アラブ地域で平和構築と和解に向けた共生教育を展開する。多様性を豊かさとして享受し、平和に尽くす同財団のビジョンや取り組みについて聞いた。(敬称略)
相手を尊重し、共生を認識する
庭野 アディアン財団は設立から10年余りの短い期間でレバノンのみならず、中東や世界に影響を与える団体へと発展しました。発足の2006年当時、レバノンはどのような状況でしたか。
ダウ その頃、レバノンでは、歴史書の一章分を書けてしまうほど、さまざまな紛争が起こっていました。一つは、イスラエル軍によるレバノンへの爆撃です。また、宗教対立によって1975年に始まった内戦は90年に終結したものの、依然として宗教間の緊張が続いていました。さらに2007年と08年には、「ヒズボラ」(イスラーム・シーア派の武装組織)とその他のコミュニティーの間で新たな緊張も生じていました。それは現在も同様で、紛争にまで発展していませんが、レバノン社会は不安定な状況にあります。
タバラ “アディアン”とは、アラビア語で宗教の複数形を指します。諸宗教は本来、平和のために団結できる、という信念を持って、私たちは財団を設立したのです。