庭野平和財団GNHシンポジウム特集3 哲学者の内山氏が基調講演(後編)

幸せに生きるために

幸せとは、自分と相手との関係の中でつくられるものです。例えば「幸せな夫婦」「幸せな親子」とは、「幸せを感じさせてくれるような関係」ということになります。

ただし、幸せな関係のあり方は、一人ひとりの生き方や暮らしている地域によってさまざまですから、僕の住む上野村ですと、人間と山奥の自然との関係が非常に大きな意味をなしてくる。山奥の村としてつくってきた歴史もあり、そういう関係性の中で、ここの暮らしもなかなか悪くないなと感じさせてくれる。納戸義彦さん(NPO法人「島の風」代表)ですと、あまり大きくはない島で暮らして、島の周りには海があるという、そうした世界の中でいろいろな関係性ができてくる。

そうすると、私たちが幸せを感じる関係は、実は手が届くような近い関係の中でしかあり得ないと言えるではないでしょうか。その意味で、手が届くような小さな関係の中で、幸せを感じさせてくれる関係をつくっていくことが大切になります。

長らく、大きなシステムをつくり、それによって大きなパワーを発揮して、ゆえに大きなシステムが大事にされる時代が続いてきました。けれど今、自分の体で感じることができる距離感を大事にして結び合い、幸せを感じることができる関係をどうつくっていくか――そこに価値を求める時代に移ってきていると感じます。

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