鼎談 『いま、宗教者にできること』――北朝鮮情勢に対して

平和国家として果たすべき役割

光祥次代会長

庭野 核開発を進める北朝鮮に対し、6カ国による協議が行われもしました。ただし、政治の場では駆け引きや圧力という面が強く、私たちが考える対話が、これまでなされてきたとは思えません。そうした中で、対話では問題を解決することはできないという雰囲気が醸し出されていく現状を危惧しています。真の対話には問題を解決する力があると思うのですが。

小林 その通りです。戦争の気配が漂ってくると、互いに圧力を掛け合い、どちらかが耐え切れずに暴走するといったことが起こりがちです。そうならないために、対話が必要です。なるべく率直に話し合い、解決策を見いだすのです。

もし北朝鮮が暴走すれば、韓国のソウルは国境から近距離ですから、甚大な人的被害が出る可能性が高い。ミサイルによる日本への攻撃もあり得ます。アメリカと北朝鮮が挑発し合っているので、こうした深刻な状況をとどめようと、ロシアや中国、ドイツなど各国政府が対話を求める声明を出しています。

韓国も人道援助を行いました。これらは、追い詰められている北朝鮮が暴発しないようにとの意思によるものです。日本もそうした国々と協力し、対話によって危機を回避するよう努めることが、平和国家としての本来の姿ではないでしょうか。

庭野 圧力をかけ続けるというのは、危険なことですね。一方で、対話や人道援助によって解決の糸口を探ろうとしている努力が、国際協調を乱すといった見方をされるのは心配な点です。

小林 米朝間の緊張が高まる中で、「米日枢軸」の形になっているように見受けられます。戦前、日本とドイツ、イタリアが枢軸国家として戦争を起こしたという認識から、私たちは戦後、その反省をしました。今、日本が対立を強める側になるか、戦争抑止の側になるかは、とても重要な問題です。

多くの人が感じていると思いますが、北朝鮮という国家やその指導者が理性的な行動をとっているとは考えられません。人間関係において、相手が理性的であれば、こちらは何が正しいかを主張して議論できます。しかし、相手が理性を失って何をするか分からない状況で、挑発するような態度を示すのは非常に危険です。外交も同じで、こちらの言動が相手にどういう効果を及ぼすかを考えなければなりません。戦争にならないことが全ての人の望みなのですから、そのために必要な言動を考慮し臨むことが大事になります。

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