「第34回庭野平和賞」贈呈式 諸宗教協力を通して中東和平に尽くすムニブ・A・ユナン師に

3宗教の聖地エルサレムで、中東和平に向けた諸宗教対話の促進に努めるユナン師(右)に、庭野名誉会長(左)から賞状が贈られた

公益財団法人・庭野平和財団による「第34回庭野平和賞」贈呈式が7月27日、東京・港区の国際文化会館で行われた。受賞者は、「ルーテル世界連盟」名誉議長であり、「ヨルダン及び聖地福音ルーテル教会」(ELCJHL)監督のムニブ・A・ユナン師(66)。キリスト教の信仰を基に、全ての人に慈しみの心で接し、諸宗教対話を通して中東和平の実現に努めてきた。当日は、宗教者、識者ら約160人が見守る中、同財団の庭野日鑛名誉会長からユナン師に賞状が手渡された。

ユナン師は1950年、パレスチナ難民の両親のもと、エルサレムで生まれた。少数派のキリスト教徒と多数派のムスリムが共に暮らす共同体で穏やかな幼少期を過ごした。11歳から牧師を志し、フィンランドのルーテル・オピスト大学を経て、ヘルシンキ大学で神学の修士号を取得。77年、ELCJHLの青年牧師に就いた。

ユナン師が活動の拠点を置くエルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラームの共通の聖地として古くから栄えてきた。しかし、48年のイスラエル建国以降、ユダヤ人とパレスチナ人の対立が悪化し、多くの血が流された。

こうした状況の中、ユナン師は、80年代後半から諸宗教対話の研究や活動に取り組み始めた。第1次インティファーダ(イスラエルの占領支配に対するパレスチナ住民の抵抗運動)の激化を受け、キリスト教とユダヤ教の対話による平和構築を唱え、両信徒と「ヨナ・グループ」を設立。平和や正義、選挙といったさまざまなテーマの対話フォーラムを開催し、諸宗教者の交流の場を設けてきた。

2002年、エルサレムの3宗教の指導者が一堂に会した中東宗教指導者会議に出席し、武力衝突の早期終結を求める「アレクサンドリア宣言」の採択に携わった。同会議では、全ての民族の公益のため、和解につながる平和の探求を続けることが、宗教指導者間で約束された。

05年には、3宗教の最高指導者と協力し、エルサレムに「聖地宗教評議会」(CRIHL)を創立した。CRIHLでは、宗教者が連帯して、政治的な正義により行われる攻撃を非難し、敵・味方なく全てを愛で包み込む宗教的な真の正義を訴えている。また、聖地における行動規範を重んじるとともに、教育分野にも着目。イスラエルとパレスチナ双方の教育カリキュラムに欠けていた「他者の中に神の顔を見る」視点を盛り込むよう働き掛けている。

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