第11回核不拡散条約(NPT)再検討会議で世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)が意見表明
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国連総会議場のNGO席から発表する神谷氏(写真提供・WCRP日本委員会)
第11回核不拡散条約(NPT)再検討会議が4月27日から5月22日まで、米・ニューヨークの国連本部で開かれた。5月1日の「NGOセッション」では、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)のグローバルネットワークを代表し、WCRP日本委員会「ストップ! 核依存タスクフォース」メンバーでアジア宗教者平和会議(ACRP)シニアアドバイザーの神谷昌道氏が意見表明を行った。かつて立正佼成会の国連代表を務め、40年以上、核軍縮や非武装をテーマに研究、提言してきた神谷氏に所感を聞いた。
崩れつつある国際協調
1970年3月5日に発効した核不拡散条約(NPT)は、「核保有国を増やさない(不拡散)」「保有国は核を減らす(軍縮)」「原子力の平和利用」の3本柱で成立した国際秩序の土台となる条約です。日本を含め、191カ国・地域が加盟しています。
核保有国とは、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国で、それ以外の国の核保有はNPTによって禁止されています。条約の不平等性を解消することを目的に、NPT第6条では核保有国に対し、核兵器を含めた包括的な軍縮の義務と履行を求めています。5年ごとの再検討会議は軍縮の進捗(しんちょく)を検証する場として機能してきましたが、2015年は中東問題で、22年はロシアによるウクライナ侵攻を巡る対立で成果文書は採択されずに決裂しています。
今回、加盟国代表による一般討論では、およそ160の国と機関が意見表明をしました。その一般討論を通して、継続するロシアの脅威やトランプ米政権の欧州への関与の低下、それに伴う北大西洋条約機構(NATO)加盟国による核兵器への依存の増加、さらには拡大抑止(核の傘)への依存の増幅など、昨今の国際情勢が表面化されました。ウクライナに軍事侵攻を続けるロシアを批判する国々はスピーチの中で、「こうした動きはNPTの精神に逆行する」と強く非難しました。各国の利害が複雑に絡み合う国際関係の中で、核軍縮に向けた合意形成の難しさを垣間見たシーンでした。核兵器を安全保障上の「必要悪」とみる立場と、容認できない「絶対悪」とする立場に分かれ、両陣営の溝がとても深いことを痛感させられました。
神谷氏は「核依存から核軍縮重視へパラダイムシフトが進んでいる」と強調する
調核抑止から分かち合う安全保障へ
自国第一主義がはびこり、国際協調が崩れつつあるこの時、創設時から核廃絶に取り組んできた世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)が、NPTの場で意見表明の機会を得たことは極めて意義深いと受けとめています。意見表明の冒頭で私は「核兵器は暗黙にあって脅威であり、人類の生存に対して、今もなお危険な存在」と強調し、「ヒロシマとナガサキで目撃された苦しみは、核兵器の壊滅的な結末に対する、生々しく永続的な警鐘になっている」と訴えました。その上で、核兵器の保有と維持は、人間の尊厳に関わる道徳的基礎に直接的に矛盾すると指摘し、核兵器全廃への道程は複雑であり持続的な施策が要求されるが、最も重要な要素は「信頼」に基づく外交であると促しました。
加えて、国家は核兵器に依存する基本政策を止(や)め、政治的対立や偶然の事故によって、核兵器を使用されかねない危険な状態から脱する政策を講じるよう求めました。さらに宗教者の使命に触れ、平和と正義、そして、他者の安全が確保されて初めて、自らの安全も確保される「Shared Security(分かち合う安全保障)」に根ざした未来を築くため、「世界の諸宗教コミュニティーは現在、未来においても核兵器の脅威を取り除くための努力に対する支援を継続していく」と決意を表明しました。
意見表明の最終部分では、1978年の第1回国連軍縮特別総会で、WCRP国際名誉議長として開祖さま(庭野日敬開祖)が行った演説の一節「人類は軍備競争によって滅亡する前に、人類が軍備競争を終わらせなければならない」を引用し、「核兵器廃絶」の緊急性を訴えました。核廃絶に込められた先人の願いを受け継ぎ、実現に向けた宗教者の決意として、この言葉を盛り込んだのです。
核軍縮には、核保有国をはじめとする各国の政府に重要な責任があることはもちろん、宗教者にもまた、核廃絶を道徳の根幹に関わる問題として取り組む責務があります。そのためにWCRP/RfPは、力と破壊に基づく社会は正義ではないという確固たる信念を持ちつつ、信頼に基づく外交の重要性を訴え、核廃絶への世論を形成していくことに取り組んでいくことが、国際社会から求められているのではないでしょうか。
一人ひとりの心に平和のとりでを
残念ながら、今回も全会一致の「成果文書」は採択されませんでしたが、NGOや宗教者にとどまらず、多くの国や政治グループが核兵器を「絶対悪」とする立場を表明していることからも、核に依存した安全保障から核軍縮重視へのパラダイムシフトが進んでいるのは明らかです。人間の尊厳を真に重視するならば、核兵器は決して容認できない「絶対悪」であることは、いわば当然なのです。
あらゆるものを破壊する究極の暴力が核兵器だと思うのですが、それは家庭内暴力(DV)や地域、学校・職場でのいじめといった日常に潜む暴力とも通底しているように思います。
ユネスコ憲章の前文には〈戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない〉とあります。戦争は決して遠い世界の出来事ではなく、一人ひとりの心の在り方と結びついた、人間が生み出す暴力の延長線上にあるものです。だからこそ、核兵器のない世界を実現するためには自己の内面と向き合うことが欠かせません。身近に隠れた暴力を取り除こうと努めることが積み重なり、やがては究極の暴力である核兵器の廃絶につながっていくと信じます。
プロフィル
かみや・まさみち 1957年、神奈川県生まれ。81年4月、立正佼成会幹部養成機関の学林本科(現・学林大澍)に入林。87年5月に米国タフツ大学フレッチャー法律・外交大学院の修士課程を修了した。その後、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際事務総長補佐、副事務総長を歴任し、98年10月から2002年3月まで、広島市立大学広島平和研究所で核軍縮分野の特別研究員として勤務。以降、本会外務部次長、ニューヨーク教会長、国連代表、軍縮問題アドバイザーを経て、16年12月からACRPシニアアドバイザーを務める。





