中央学術研究所が『大乗仏典思想叢書』第12号を発刊 米国・法界仏教大学の授業用テキストに

『大乗仏典思想叢書』第12号は、『妙法蓮華経』原典研究に資する資料として活用が期待される
立正佼成会中央学術研究所はこのほど、『妙法蓮華経』の原典(底本)研究に寄与する『Philosophica Mahāyāna Buddhica Monograph Series(大乗仏典思想叢書=そうしょ)』の第12号『梵文(ぼんぶん)法華経「ケルン・南條校訂本」第24章ローマ字本脚注補完(特別号)・語彙(ごい)索引・韻律解析』を発刊した。同研究所学術研究室の西康友主幹が編纂(へんさん)した。
同叢書は、1908年から12年にかけて刊行された、漢訳法華経の原典とされる「梵文法華経」の研究に広く用いられる標準・基準テキスト『ケルン・南條本』に焦点を当てたもの。複数の写本を用いた世界初の校訂本だが、脚注の不備、書写年代・出土地域の違いを区別しない写本の校合(きょうごう)など、編纂方法の問題が指摘されてきた。
この問題を解決するため、西主幹はこれまで、『ケルン・南條本』に用いられた全ての写本の語彙・語形・語法などを言語学的に分析。本文と脚注のローマ字化、脚注の補完、写本間における類似性の精査を行い、法華思想とその成立過程の研究に貢献する基礎資料づくりを進めてきた。
今回の発刊は、アメリカ・カリフォルニア州の私立大学「法界仏教大学」(Dharma Realm Buddhist University)から、そうした研究を授業用テキストとして使用したいと要請を受けて実現。同大学では、哲学、文学、自然科学など東西の古典を幅広く学ぶリベラルアーツ教育を展開し、仏教経典においては英訳のみならず、梵文や漢文で記された原典も参照しながら探究を深めている。今年1月、同大学のローレン・バウシュ教授が、世界各地の仏教研究者が交流するウェブサイトを通じて西主幹に連絡。バウシュ教授の授業で「梵文法華経」の第24章を扱うことから、学生たちが原典の翻訳に活用できるよう、『ケルン・南條本』の脚注補完を新たに提供する運びとなった。
第12号では、『ケルン・南條本』第24章「avalokiteśvaravikurvaṇanirdeśaḥ」(「妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五」に相当)の脚注を補完した。併せて、『ケルン・南條本』第24章に用いられた写本の語彙索引と、同校訂本第24章の詩脚部分の韻律解析結果も明示した。
語彙索引と韻律解析は、学生向けの参考資料として掲載されたもので、『ケルン・南條本』に用いられた写本には、中期インド・アーリア語と古典サンスクリット語などが混在しているが、これらを活用することで、写本ごとに語彙・語形・語法を検証したり、当時の人々が暗唱していた詩脚(偈文句)のリズムの傾向を理解したりする手がかりとなる。
本書は今春より、サンスクリット語の講義で用いられている。
刊行に際して西主幹は、「このたびの依頼を受けたことは、『立正佼成会をもととして世界万国に法華経が弘まる』という庭野日敬開祖や長沼妙佼脇祖の願いを、微力ながら実現できた一つの出来事になるかと思います。さらなる研究の推進を仏さまに激励して頂いたと受けとめ、今後も精進してまいります」と語った。
今回の刊行は、西主幹が文部科学省の外郭団体・日本学術振興会から科学研究費の助成を受けた研究課題「梵文法華経諸問題解明のための基盤テキスト構築―『ケルン南條本』校訂へ向けて」(JP21K00058)に関連した、最も主要な研究成果の一つ。今後の梵文法華経研究や漢訳法華経の対照研究、梵文法華経写本を用いた校訂本編纂などに、必要不可欠な資料となる。
中央学術研究所では、仏教経典の解読や研究の資料として同叢書が広く活用されることを願い、ウェブサイトで全ページを公開中。以下のURLから、PDF版を入手できる。





