教団付置研究所懇話会生命倫理部会「第23回研究会」 臓器移植法施行から26年 現状と課題学ぶ

臓器移植の海外比較と今後の課題

一方で、海外と比べて国内の提供者数は非常に少ない状態が続いており、移植を望む患者の待機期間は依然として長期化していると指摘。「現在、国内で移植を待つ患者は約1万6000人に上ります。それに対して、移植を受けられる人は年間600人程度で、希望者のわずか4%。人口100万人当たりのドナー数も、アメリカでは44.50人、韓国は7.88人ですが、日本では0.88人と極めて少ない。さらに移植までの待機期間は、腎臓移植で14年以上、心臓では3年以上かかります」と述べ、移植医療が通常医療として運用できていない実情を紹介した。さらに、レシピエントに選ばれても合併症や健康不安、経済的理由から移植を見送るケースや、腎移植を受けても拒絶反応が進行すれば短期間で透析療法を再開しなければならない患者も存在するなど、移植医療の課題点を伝えた。

ドナーコーディネーターとしての体験を踏まえ、石井氏は脳死臓器移植の抱える課題点を指摘した

最後に、ドナーコーディネーターとして移植の現場に身を置きながら抱いてきた自身の思いを披歴した。「脳死臓器移植には提供者の家族の苦悩をはじめ、『誰かが亡くなったことによって助かる命があるという現実をどう受けとめたらよいのか』という関係者の葛藤や、レシピエントが生きていく上で受ける社会的なプレッシャーなど、さまざまな問題、事情が現場にはあります。私自身、ドナーになるべきか否か迷い、まだ意思表示カードに記入できずにいます。結論を出すには自分の感性を磨き、命の意味について考えていくしかない」と述べた。また今後、社会全体として臓器移植医療をどう捉えていくのか、その議論を深めていくために宗教者の果たす役割は大きいと期待を寄せた。

質疑応答では、海外と日本の臓器移植制度の違いや脳死に関する各教団の見解、さらには近年研究が進んでいるブタの臓器を人間に移植する「異種移植」と動物福祉の問題などについて活発な意見交換が行われた。