欧州大陸に吹く戦争の風――緊迫するウクライナ情勢(海外通信・バチカン支局)
昨年11月頃から、ロシアはウクライナ国境付近に10万人規模の軍を集結させ、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟を阻止しようと軍事的威嚇を続けている。
ウクライナは欧州連合(EU)とロシアの両方と国境を接する。2014年には、ウクライナで親ロシア政権が崩壊すると、ロシア軍がウクライナ南部クリミア半島を占領した。
緊張が高まるウクライナ情勢の打開を巡り、今年初めからロシアと欧米側の交渉が始まったが、緩和の兆しが見られないまま、欧米側はロシア軍のウクライナ侵攻に不安を募らせるばかりだ。ロシアの軍事行動に備え、欧米諸国はウクライナへの軍事支援を開始し、NATO軍が東欧地域で軍事力を増強している。1月25日付の「朝日新聞」電子版によると、バイデン米大統領は、約8000人の軍隊を待機させており、バルト海域への派兵(5000人とも推測されている)を検討しているという。同時に、米大使館職員にウクライナからの退避を命令。「米国が警戒を強めるのは、ロシアが外交協議に応じつつも、軍事圧力を弱めないためだ」と明かしている。
ローマ教皇フランシスコは1月23日、バチカン広場で行われた正午の祈りの席上、緊迫するウクライナ情勢に言及し、和平を脅かして、「欧州大陸における安全保障を疑問視させるのみならず、より広い地域にも影響を与える緊張の高まりを憂慮する」と表明。「全ての善意の人々(信徒)」に向けて、「政治的なあらゆる活動とイニシアチブが、一方的な利益ではなく、人類の友愛に奉仕するものであるようにと願う祈りを、全能の神に対して行うように」と呼びかけた。
また、「他者に害を与え、自身の目的を追求する者は、私たち(人類)の全てが兄弟として創造されたものであることを無視し、人間としての自身の使命を侮辱している」と非難した。「現在の(ウクライナにおける)緊張の高まりを考慮し、1月26日を『ウクライナ平和祈願の日』に定めることを提唱する」と述べた。
その26日、教皇はバチカンで行われた一般謁見(えっけん)の席上、信徒に重ねて祈りを捧げるようにと呼びかけ、「ウクライナの地において友愛の花が開き、傷痕、恐怖、分裂を乗り越えることができるように」と願った。さらに、今日の祈りと嘆願が天に届き、「この地上の(政治的な)責任者の頭脳と心を動かし、対話が優先され、一部の人に偏ることなく、全ての人々の利益となるように願う」と述べた。