ACRP東京大会が閉幕 環境危機や紛争、人権侵害の解決に結束

プログラムの開始前には、参加者代表によって諸宗教の祈りが捧げられた

新型コロナ感染症への対応も協議

全体会議Ⅱでは、フラッグシップ・プロジェクトの成果と課題が報告された。この中の「平和構築と和解」に関しては、WCRP/RfPミャンマー委員会メンバーのアル・ハッジ・ウ・エ・ルウィン師(ミャンマーイスラームセンター理事長)が、今年2月の国軍による暴力的な政変以降の活動を報告。恐怖におびえる市民の生活を伝えるとともに、同国際委員会と連携して、国軍に暴力の停止と、対話を通した民主的な統治の回復を訴えていると説明した。同日本委からの支援金に謝意を表し、人道支援に役立てていると述べた。

会場内に設置された木に結ばれた参加者からの「平和へのメッセージ」を紹介する司会者

さらに、神谷昌道シニアアドバイザーが、今後5年間のフラッグシップ・プロジェクトについて、引き続き五つの事業を実施すると発表。政情不安が続くアフガニスタンやミャンマーなどでの人道支援、核兵器廃絶への活動、環境教育などを行うと説明した。最後に、日本委員会から同プロジェクトに3000万円の資金助成を行うことが植松理事長から発表された。

『新型コロナウイルス感染症とアジアの宗教コミュニティ:学びと復興』をテーマにした全体会議Ⅲでは、世界保健機関(WHO)ユニバーサルヘルスカバレッジ担当親善大使を務める武見敬三参議院議員や、中国宗教者和平委員会(CCRP)のイマーム・ヤン・ファミン副会長(中国イスラミック連盟会長)、WCRP/RfPフィリピン委員会メンバーのカルロス・レイス神父らが発言。各国の感染状況のほか、宗教者の取り組みやコロナ禍の中で発生した諸問題への対処などについて専門的知見や宗教的観点から意見を述べた。

レイス神父は、フィリピンで実施されたロックダウン(都市封鎖)で多くの人が職を失い、物乞いが増加したと報告。これに対し、カトリック教会では困窮者に食料を配布し、心に寄り添って困窮者が希望を持てるように努めてきたと語った。アジア全体の感染抑制のため、「国や宗教、文化の違いを超えて危機意識を共有し、慈善活動も協力していかなければ」と訴えた。

このほか、『誰一人取り残さない、健やかで豊かなアジアの平和をめざして』を共通テーマに、『平和と人間の尊厳の教育』『弱い立場の人々の人権と幸福』『社会の共存と調和のための和解』『多様化する社会における開発と環境』と題した分科会を実施。アフガニスタンに関する特別セッションも行われた。

アフガニスタンからの報告。大会では同国の現状や軍事クーデター後のミャンマーの状況が伝えられ、宗教者の取り組みについても議論された

閉会式では、植松理事長の「感謝の辞」の後、大会宣言文を発表。宣言文には、アジアの和解と平和に向けた宗教者の役割とその重要性を改めて確認した上で、「アフガニスタン、ミャンマーなど我々の人道的支援を必要とする国々の平和構築と和解に全力で取り組む」「核兵器廃絶のための活動や、原子力の平和利用に関する賛否両論の議論に参加し、防衛予算を平和関連活動推進のための資金に転換することを提唱する」など12項目の提言が明記された。

ACRPの新たな人事も公表された。新実務議長にデスモンド・カーヒル副事務総長(オーストラリア)が就任。日本からは、庭野会長が共同会長を退任して名誉会長に、天台宗・妙法院門跡門主の杉谷義純師が共同会長に就いた。事務総長には根本氏の後任に、篠原祥哲同日本委事務局長が就任した。また、今大会から東ティモールが加わることになり、加盟国は22カ国になる。

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