中央学術研究所 「第12回善知識研究会」 混沌とする社会の中での宗教の役割テーマに

『宗教の創造――混沌(カオス)から世界(コスモス)を取り戻すために』と題して基調講演を行う関西大学文学部教授で、支縁のまちネットワーク共同代表の宮本要太郎氏(「Zoom」の画面)

『困窮者と伴に歩む宗教の可能性――混沌から秩序ある世界へ』をテーマに、立正佼成会中央学術研究所による「第12回善知識研究会」が10月30日、オンラインで開催された。同研究所外部講師、客員研究員、教会長、本部職員、会員など約80人が出席した。

当日は、関西大学文学部教授で、支縁のまちネットワーク共同代表の宮本要太郎氏が『宗教の創造――混沌(カオス)から世界(コスモス)を取り戻すために』と題し、基調講演を行った。

宮本氏は、多忙な現代人は自らの「魂」の存在を忘れていると指摘。人と触れ合うことで人間らしい心を取り戻せる重要性を、多くの人がコロナ禍を通して再認識したと説明した。

また、人間は本来、苦悩する生き物であり、人々の苦に寄り添い、苦を取り除こうとするところに宗教者の存在意義があると強調。相手の表面的な言動にとらわれず、他者の考えや感情を推し量る能力が、混沌(こんとん)とした現代を生きる人間には必要であり、宗教者がその範を示すことが大切と語った。

この後、『伴走型支援――生活再建に向けて』と題し、金光教羽曳野教会長で支縁のまち羽曳野希望館代表の渡辺順一氏、大阪希望館代表理事で関西光澍館運営協議会共同代表の岡本友晴氏、救世軍社会事業団救世軍世光寮施設長の石川一由紀氏が、生活困窮者を支援する中で得た気づきや課題を発表した。

渡辺氏は、夫のDVや自らの失職が原因で住居を失った女性を保護、支援するシェルターを運営する中での体験を報告。宗教者は困窮者と積極的に触れ合い、生きる希望を見いだせるように緩やかな絆を紡いでいく必要があると訴えた。

岡本氏は、居住と就労を支える自団体の事業に触れながら、コロナ禍の中で自治体からの支援策がいつまで継続されるかと不安に思う入居者の心情を詳述した。

一方、石川氏は、救世軍の児童養護施設の施設長としての活動を紹介。親自身の社会的孤立や貧困が児童虐待の要因であることから、子供の保護とともに親への精神的ケアも重要と話した。

続くパネルディスカッションでは、生活困窮者や虐待の被害者へのサポート、加害者への対応の仕方などについて意見が交わされた。