「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」にローマ教皇が呼び掛け(海外通信・バチカン支局)
ナゴルノ・カラバフ自治州で軍事衝突 対話と交渉による解決を求める声
旧ソ連に属していたアゼルバイジャンからの独立を主張するナゴルノ・カラバフ自治州で9月27日、アゼルバイジャンと、自治州を支援する隣国アルメニアの両軍による戦闘が発生した。この一帯は南カフカス地方にあたり、ローマ教皇フランシスコは同日、バチカンでの正午の祈りの席上、「カフカス地方から、軍事衝突という憂慮すべきニュースが届いている」と述べ、両軍の戦闘に言及した。
この中で教皇は、「対立している当事者たちが善意と友愛の具体的な方法を示すことで、兵器を使う武力行使ではなく、対話と交渉によって紛争の解決を図るよう願う。カフカス地方での和平のために、沈黙のうちに祈ろう」と、参集した信徒や観光客に語り掛けた。
アゼルバイジャンはイスラーム・シーア派の国民が大半を占めるが、同自治州の人口の8割はアルメニア正教会の教えを信奉するアルメニア人だ。1991年、自治州の住民はアルメニアへの編入を求め、独立を宣言。アゼルバイジャンはこれを認めず、両国は紛争に突入し、94年に停戦合意が結ばれた。
その後、同紛争はロシアに支援されるアルメニア、トルコの支援を受けるアゼルバイジャンという構図に変化し、断続的な軍事衝突が絶えない。今年7月にも、両国間で戦闘が勃発している。
ロシアの外務省は同日、両国に対して「即時停戦と状況を安定化させるための交渉を開始するように」と要請した。これに対しトルコは、「アゼルバイジャンに対する、一般市民を犠牲にしたアルメニアからの攻撃」と非難し、「アゼルバイジャンに対するあらゆる支援」を約束した。イタリア外務省も同日、両軍の軍事衝突に憂慮を深めていると表明し、「両国は、即時停戦と緊張緩和のための交渉に応じるように」と呼び掛けた。
世界教会協議会(WCC)は9月28日、両軍が「即刻、軍事活動を停止し、対話と交渉のテーブルに戻るように」と訴えるイオアン・サウカ暫定総幹事名の声明文を発表。トルコ政府の立場を批判し、「(同紛争の解決を目指して欧州安全保障協力機構内に設置された)ミンスク・グループのメンバーであるトルコが、敵対者ではなく、中立的な役割を果たすように」と要請した。さらに、同紛争の再燃が「われわれの国家の権利、聖なる領土、未来、国の尊厳性を守るように誘(いざな)っている」という、アルメニア正教会の最高指導者であるカレキン二世の談話を紹介した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)