「人類に対する敵との闘い――キリスト教と新型コロナウイルス」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

イランやマレーシアでも感染が拡大

日本時間3月27日午前4時の時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)のイランにおける感染者数は2万9406人、死者が2234人と発表された。依然、増加傾向が続いている。

感染者数は米国が8万2404人で、中国、イタリアを上回り、死者数ではイタリア(8165人)、スペイン(4089人)が上位になっているが、これらの国に次いでイランでも大きな被害が発生している。イランはこれまで、中東諸国の中で優れた医療制度を誇ってきた。だが、2015年7月に米英独仏中ロとの間で結んだ「イラン核合意」に対し、トランプ米大統領が「致命的な欠陥がある」と非難し、18年5月に米国が離脱した後、経済制裁を受けて医療制度が脆弱(ぜいじゃく)化した。新型コロナウイルス感染症の対処能力も懸念されている。

中国、ロシア、パキスタンが米国に、「世界で感染拡大が続いている間は、イランに対する経済制裁を停止するか、あるいは軽減するように」と呼び掛けた。イランのザリフ外相は、「米国によって不法に強いられた経済制裁の解除を要請する、こうした世界レベルでのキャンペーンにイラン国民は感謝している」と発言した。

イランで気さくなアーヤトッラー(シーア派の高位のウラマー)として知られるサイード・ダマド師(イラン科学アカデミーのイスラーム学研究局局長)はこのほど、ローマ教皇フランシスコに宛て親書を送った。この中で同師は、「米国の経済制裁が、イランのムスリム(イスラーム教徒)の民を苦しみと災難に追い込んでいる」とし、「米国による非人間的な経済制裁が停止されるよう介入の要請を、世界のカトリック信徒たちから愛されるリーダーに向けて行ってほしい」との趣旨をしたためた。しかし、イランの国家最高指導者であるハメネイ師は、「イラン最大の敵である米国からの援助を信用しない」と発言している。

一方、マレーシアの首都クアラルンプール郊外で2月27日から3月1日まで、イスラームの宗教行事(タブリー)が執り行われ、1万5000人のマレーシア国民とブルネイ、シンガポール、カンボジア、タイなど近隣諸国からムスリム1500人が参加した。この際、新型コロナウイルスの感染が起こり、その数は約700人に及んだという。それにより、東南アジア全体に広がった可能性が高いといわれている。

マレーシア政府筋は、国内の感染者900人のうち561人が、この行事の参加者であると発表。マレーシアからの帰国者にも感染が見つかり、ブルネイ(61人)、シンガポール(5人)、カンボジア(22人)、タイ(少なくとも2人)で、その報告があったとされている。また、マレーシアには約10万人のロヒンギャ(ミャンマーから逃れたムスリムの民族)が生活しているが、彼らの400~600人が先の行事に参加したと推定されており、政府は彼らの行方を追跡している。しかし、密入国しているケースがほとんどのため、逮捕を恐れる彼らは政府の捜索活動には非協力的で、それがかえってロヒンギャが暮らす地域の感染拡大の危険性を高めている。

このほかイスラーム諸国では、トルコで金曜日の集団礼拝が中止され、有名なイスタンブールのスルタンアフメット・モスク(通称・ブルーモスク)も閉鎖された。サウジアラビアにある聖地マッカ(メッカ)巡礼の中心地であるマスジド広場にも人影がなくなったと報じられている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)