困難抱え生きる人の痛みに寄り添う 「シェアハウスこうじゅ(関西光澍館)」でシンポジウム

社会的孤立者に対する宗教者の伴走型支援活動

この中で岡本氏は、2008年のリーマン・ショックの影響で経済が冷え込み、「派遣切り」「ネットカフェ難民」が社会問題となった時期に、不安定就労によって住まいをなくした若者への支援を目的に09年に大阪希望館を設立したと経緯を紹介した。最長で1カ月間滞在できるシェルターの運営や障害者福祉、就労支援に取り組む中、若者だけでなく各年代で、「職業が安定しない」「緊急連絡先や初期費用がない」「保証人がいない」などの理由で一般の賃貸契約を結べずに住まいが見つからない人が多くいることを知ったと報告。そうした人々が長期的に生活できる安定した住まいが必要と感じるようになり、共同住宅の開所に至ったと述べた。

共同住宅は全40室。各部屋には生活に必要な家具や家電が備えられている

一方、相ノ谷室長は、「光澍」には、仏の智慧(ちえ)や慈悲を世に注ぐという意味があると説明。以前、本会学林光澍グループの次長を務めたことに触れ、一昨年まで学生寮だった関西光澍館での人材育成には、「将来、平和のために役に立つ人間になってほしい」との願いが込められていたと話した。

その上で、今後、同館が生活困窮者の支援に活用されることに期待を示し、「大阪希望館、自治体、佼成会が協力することで、苦しみの中にいる方が自分自身の尊さや自信を取り戻し、社会に出て生きる喜びを感じて頂ける場になれば」と結んだ。

岡本氏と同じくシェルターを運営する渡辺師は、「日本の諸宗教が培ってきた、人の痛みと喜びを分かち合おうとするスピリチュアリティーが、無縁多死社会の時代に非常に力を持ってくる」と発言。宗教の公共性は、苦しんでいる人の「痛み」に宗教コミュニティーが寄り添うところにあるとし、「時代にどう応えていくか」を諸宗教は共に問われていると語った。

この後、パネルディスカッションが行われた。

宮本氏は、戦前は宗教界が積極的に社会福祉活動に携わってきたが、戦後はそうした活動に対し公的資金が投入されるようになり、宗教団体が運営する社会福祉施設を教団と分離せざるを得なくなったと解説し、「それが宗教の公共的な役割を狭めたり、歪(ゆが)めたりする結果になった」と指摘。市民主体の社会福祉活動が活発化することで宗教界との協働の可能性が再び広がると述べ、福祉は行政が担うものという発想を転換する時期に差し掛かっているとの考えを示した。

岡本氏は、今後、シェアハウスこうじゅでは、個人の求めに応じた支援を進めていくことが重要と強調。「日常的な相談に気軽に乗れるような仕組みづくりが大事と感じます」と述べ、枠にはめない自由なサポートをしたいと語った。