『慰霊をめぐる現在』テーマにシンポ 国際宗教研究所と上智大学グリーフケア研究所が共催
『慰霊をめぐる現在――「宗教離れ」の時代の宗教を考える』をテーマにしたシンポジウムが2月22日、上智大学四谷キャンパス(東京・千代田区)で行われた。国際宗教研究所、同大学グリーフケア研究所が共催し、宗教者や研究者ら90人が参加した。立正佼成会の西由江習学部次長(青年ネットワークグループ)がパネリストとして出席した。
日本では、特定の信仰を持っていると答える人が少ないが、死者の霊を慰める「慰霊」への関心は高いといわれる。そうした中で、「慰霊」を通して宗教や宗教者が伝えるメッセージ、「慰霊」が社会で果たす役割などを考えるため、今回のシンポジウムは開催された。
当日は、日本基督教団石巻栄光教会の川上直哉牧師、本会の西次長、尼僧である在日ベトナム仏教信者会のティック・タム・チー会長、浄土宗総合研究所の名和清隆研究員がそれぞれ見解を発表した。
川上師は東日本大震災の後、諸宗教者と共に身元不明の犠牲者を弔う活動を続けている。シンポジウムでは「弔う」とは、「訪ねる」を意味する古語「とぶらう」が語源であると説明し、「亡くなった方の尊厳を確保する」ために故人の元を訪れ、慰霊の誠を捧げていると自らの活動を紹介した。
その上で、慰霊は故人に思いを馳(は)せ、「彼らが私たちに何を語り掛けているか」を感じ取る機会になると指摘。故人との「対話」を通して懺悔(ざんげ)する、「和解」するなど、故人との関係性を変えるきっかけにもなり、自分自身の生き方を見つめ直すことにつながると述べた。
西次長は、1973年に実施された本会の「第1回青年の船」を機に、青年部員がフィリピンを訪れて戦争犠牲者の慰霊と平和友好に努める取り組みが今日まで続いていることを紹介した。
また、参加者の感想から、現地で戦争犠牲者の過酷な状況を追体験することで、いのちの尊さを深く受けとめ、平和の実現のために自らの役割を考えるようになると説明。「慰霊によって自らを内省したり、いのちについて考えたりすることで宗教的情操心が育まれる」と、教育的な観点から慰霊の重要性を伝えた。