新英訳『法華三部経』発刊 44年ぶり改訂 より読誦に適した文体に
国際伝道部部長 齋藤 高市
英語圏での仏教の普及とともに、英語の仏教用語も変化しています。時代にふさわしい表現を模索しようと、2008年に英訳『法華三部経』の改訂事業が始まりました。
改訂に際し、重点を置いたのは、読誦に適した文章に仕上げることでした。現地の布教リーダーの皆さんの心に響き、さらに毎日唱えることによって、教えが自然と生活の指針となっていくような経典をつくる――そのために現地の意見を取り入れながら、専門家をはじめたくさんの方々の英知を結集させていきました。ご供養を通して仏さまとつながる大切な時間に、経文をよりスムーズに読み上げられるようになったことが新英訳の一つの大きな特徴です。
海外での活用はもちろん、近年増えている日本在住の外国人への布教にも大いに役立てて頂きたいと思います。また、英語を嗜(たしな)む日本の会員さんも新英訳を読むことで、より一層法華経への理解が深まるのではないでしょうか。これから英語を学ぶ少年部員たちに「素読」のような形で読んでもらうことも、仏さまとのご縁を深める良い機会になるかもしれません。
さらに、新英訳は、会員さんだけでなく、広く一般の方にも、法華経が日常生活で実践できる「生きた教え」であると知って頂く重要な役割を担っていくのではないかと期待しています。
最近、欧米の方々が仏教に求めるものが変化しているように感じます。以前は仏教哲学といった知的関心の追求が主流でしたが、現在は目的が多様化し、例えば瞑想(めいそう)やヨガ、経典の読誦など、実践を通じて仏教をさらに深く体得したいという方が増えているのです。このような方々に、実践によって苦しみや困難を乗り越えられる、仏さまの教えの集大成としての法華経を伝えていくことができます。
私が以前、ニューヨーク教会長を務めていた時、開祖さまのご著書と出合い、人生が変わったという男性がいました。遠方にお住まいで、教会道場にはなかなか足を運べませんでしたが、本を通して開祖さまの教えに触れ、信仰を深めておられました。一冊の本に救われる世界があるのだと感じました。そうした方が実はたくさんいるのではないかと思うのです。
今年は、国際布教60周年の節目の年でもあります。人間でいえば還暦にあたりますが、新たなスタートを切ったこのタイミングでの新英訳発刊という巡り合わせにも神仏のはからいを感じています。開祖さまは、「一人でも多くの人に法華経に示された人間の生き方を知ってもらい本当の幸せを自分のものにして頂きたい」との思いで本会を創立されました。開祖さまの願いをいよいよ自分の願いとし、世界中の人々への布教伝道に努めよと神仏が準備してくださったのだと受けとめています。