庭野平和財団による「現代社会の問題を考えるセミナー」 初回は『安保法制下の自衛隊』テーマに

庭野平和財団による「第1回現代社会の問題を考えるセミナー」が7月30日、東京・新宿区で行われ、会員や市民27人が参加した。

同セミナーは、現代社会が直面する諸問題について認識を深め、市民生活への影響などを学ぶもの。公開セミナーとして年4回の開催を予定している。

初回は、『安保法制下の自衛隊――踏み越える専守防衛』をテーマに、東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏が講演した。この中で半田氏は、昨年末に策定された日本の新たな「防衛計画の大綱」に言及。大綱には、安全保障環境が厳しさを増しているという前提に、防衛力強化を理由に事実上の空母や大陸間弾道ミサイルの保有を可能にする内容が盛り込まれているとし、こうした武器の保有は専守防衛の原則に反する可能性があることから、大綱の特徴は「専守防衛の放棄と強力な日米一体化」との見解を示した。

講演に立つ半田氏

さらに、2016年の「安全保障関連法」(安保法)の施行がもたらした変化を紹介。安保法により、日本への直接的な武力攻撃がなくても同盟国などが攻撃を受け、日本の安全が脅かされると政府が判断した場合に、自衛隊が武力を行使できるようになったと説明した。その上で、現段階ではそうした事態はまだ起きていないものの、南スーダンで実施された国連平和維持活動(PKO)の「駆け付け警護」や北朝鮮対応としての米軍防護など、自衛隊の活動範囲が拡大している状況を詳述した。

また、米中対立の続く南シナ海での日米印共同訓練の実施や、膨大な予算を投入するミサイル防衛システムをめぐるさまざまな問題点、米政府からの武器の大量購入の状況について解説した。

これらを踏まえ、自民党憲法改正推進本部による「日本国憲法改正草案」の通りに、憲法に「自衛隊」が明記されれば、さらなる自衛隊の権限の強化が図られると述べ、「もはや憲法9条改正を食い止めるだけでは不十分。安保法制を廃棄して元の日本の形に戻していかなければ、平和国家の看板は取り戻せない」と警鐘を鳴らした。