「イスラエル・パレスチナ問題に対して世界教会協議会が声明を発表」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

「アジアで、和解と非暴力の実践を」とヤンゴン大司教

『アジアにおける聖書と福音宣教』をテーマにしたカトリック指導者対象のセミナーがこのほど、タイ・バンコクで開かれた。席上、スピーチに立ったアジア・カトリック司教協議会連盟議長のチャールズ・ボー枢機卿(ミャンマー・ヤンゴン大司教)は「アジアにおいて、宗教の名を使った過激主義(宗教的過激主義)に対抗するには、平和を説き、和解を促進し、非暴力を実践していかなければならない」と訴えた。

スリランカでは今年5月、キリスト教の教会を標的にした連続爆破テロが発生し、その報復として現在、ムスリム(イスラーム教徒)を狙った事件が発生している。ボー枢機卿は、教会へのテロ事件に触れ、「多大な緊張を生むことで政治的利益を得ようとする者によって、キリスト教徒はスケープゴート(生け贄=いけにえ)にされている」と見解を表明。アジア諸国の人々にとって脅威は、自国第一主義、テロ攻撃、宗教的過激主義、搾取、集団的熱狂という問題から生まれており、人々の鬱憤(うっぷん)を操作してつくられていると警告した。その上で、こうしたアジア情勢下で平和を築いていくには、マハトマ・ガンジーが提唱した「非暴力」を実践していかなければならないと力説した。

また、「私自身も、宗教的過激派が暴力を生んだ国(ミャンマー)から来た」と明かし、「“目には目を”(という態度)が人間の視界を閉ざす」といったガンジーの言葉を引用しながら、「憎悪に憎悪で対するのではなく、平和の道具となってください」と参加者たちに呼び掛けた。「暴力は弱者のものであり、非暴力と許しは、道徳的、霊的に強き者に属する」からだ。

さらに、ボー枢機卿は、アジアにおける(カトリック教会による)福音宣教の優先課題は、「激しい紛争が長く続いている地域での和解の促進だ」と強調した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)