第36回庭野平和賞贈呈式 ジョン・ポール・レデラック博士記念講演全文
5月8日に国際文化会館(東京・港区)で行われた「第36回庭野平和賞」贈呈式の席上、受賞者のジョン・ポール・レデラック博士が記念講演に立った。全文を紹介する。(文責在編集部)
レデラック博士記念講演
「第三の転換――人類の一体化と私たちの傷を癒やす長い旅路」
このたび、このような素晴らしい表彰の機会を頂き、信仰に命を受けた平和構築者たちへの賛辞と、諸宗教協力に向けた庭野平和財団の真摯(しんし)な取り組みに対し、深い感謝の意を表したいと思います。
約40年にわたって、私は紛争地と呼ばれる場所で活動してきました。人間の苦悩が常に存在している一方で、勇気と思いやりの心を持った人々は、必ず良き変化がもたらされると確信し、忍耐強く希望を胸に抱き続けていました。
コロンビアのマグダレナ・メディオやモンテ・デ・マリアで私が目にしたのは、戦闘が続くさなかにあっても、対話に取り組むことで暴力を超え、平和地帯をつくり出そうとしている地域の人々の姿でした。
ケニアのワジールでは、誰もが安全に売買の場として利用できる市場を地元につくろうと、心に決めた女性たちがいました。彼女たちが起こした行動は、それまでなかった相互協力のネットワークをつくり上げ、その土地で起きていた紛争を終結させました。
またネパールでは、あらゆるカーストや民族的背景を持つ人々が彼らの土地にある森林と水源を共有し、保護することを決め、地域全体の対話に向けて慎重な準備を重ねました。このことで10年もの間続いていた暴力的な紛争を終結させました。
こうした人々は、暴力的な人々の内なる人間性に目を向け、地域の資源を他者と共有することを選んだ人たちでした。彼らはあらゆる困難を生き抜くための革新的な智慧(ちえ)を持った先駆者です。
これまでの平和に関する学術研究と平和構築の実践を振り返ると、歴史的な転換が二度あったことが分かります。
最初の転換は、20世紀の世界大戦の時代に起きています。平和学が誕生し、戦争がどのように発生するのか、国際秩序はどうすれば国家間紛争を防止できるか、そして国家間協力をどのようにして促進するか、ということについて研究が始まりました。